ニュースレター No,47

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授賞対象分野「健康、医療技術」分野授賞業績がん特異的分子を標的とした新しい治療薬の開発ジャネット・ラウリー博士ブライアン・ドラッカー博士ニコラス・ライドン博士1925年4月5日生まれ(86歳)シカゴ大学ブラム....

授賞対象分野「健康、医療技術」分野授賞業績がん特異的分子を標的とした新しい治療薬の開発ジャネット・ラウリー博士ブライアン・ドラッカー博士ニコラス・ライドン博士1925年4月5日生まれ(86歳)シカゴ大学ブラム・リース特別教授1955年4月30日生まれ(56歳)オレゴン健康科学大学教授、ナイトがん研究所長1957年2月27日生まれ(54歳)ブループリントメディスン社創立者、取締役概要慢性骨髄性白血病(CML)は、全ての血液細胞のもととなる造血幹細胞が、がん化して起こる病気です。2001年に分子標的薬であるイマチニブが登場したことで治療成績が劇的に改善しました。イマチニブ開発の原点となったのはジャネット・ラウリー博士が、1973年にCML患者の白血球で9番染色体と22番染色体が組み替えを起こしていることを発見したことです。ブライアン・ドラッカー博士とニコラス・ライドン博士は、この染色体の組み替えで生じたBCR-ABLタンパク質を標的として、その働きを抑制する薬の開発に成功しました。現在では、分子標的薬は、がんや自己免疫疾患などの治療に欠かせない存在になっていますが、ラウリー博士、ドラッカー博士、ライドン博士が成し遂げた成果が、分子標的薬開発の重要性を示し医学研究にとって重要な道標となりました。01慢性骨髄性白血病を引き起こす異常染色体の発生メカニズムを解明2003年に解読が終了したヒトゲノム情報を基盤とした遺伝子解析技術が、ここ数年、急速に進歩し医療応用への期待が高まっています。がん医療においても細胞のがん化に係わる遺伝子がいくつも発見され、がんの発症・転移などに係わるタンパク質を標的とした分子標的薬が次々と登場しています。こうした分子標的薬の先駆けになったのが慢性骨髄性白血病治療薬イマチニブでした。イマチニブ開発の基盤となる研究は、現在のように遺伝子解析技術が登場していなかった1960-70年代にありました。慢性骨髄性白血病(CML)患者の白血球には健康な人とは異なる染色体(フィラデルフィア染色体)が見られるという発見です。この頃、ジャネット・ラウリー博士はシカゴ大学医学部で博士号を取得し、医師、医学研究者、そして母として充実した生活を送っていました。1962年にはNIH(米国国立衛生研究所)が派遣する研究生として1年間イギリスに留学し、正常な染色体と異常な染色体を識別するための技術について学ぶことができました。帰国後、母校の血液学部門で研究を続けたラウリー博士が取り組んだテーマのひとつがフィラデルフィア染色体でした。ラウリー博士は、当時先端的研究手法であったキナクリン蛍光染色法やギームザ染色法などを利用することで、フィラデルフィア染色体がCML発症の原因である可能性を示すとともに、正常な染色体からフィラデルフィア染色体が生じるメカニズムを明らかにしました。ヒトの細胞核内には22対の常染色体と1対の性染色体がありますが、CML患者では、そのうち9番染色体と22番染色体に組み替え(相互転座)が起こりフィラデルフィア染色体が生まれていたのです。ラウリー博士が行った研究は、その後の染色体異常が引き起こす病気の原因解明に大きな影響を与えました。ラウリー博士自身、CMLの他にもヒトの8番染色体と21番染色体の転座と急性骨髄性白血病との関連を明らかにしています。特定遺伝子にアプローチすることで副作用のない抗がん剤を目指す1970年代に成し遂げられたラウリー博士の研究は、やがてCML治療薬の開発の道を切り拓くことになりました。いくつかの世界的な研究グループが9番染色体と22番染色体の転座による結合部位では、22番染色体に存在するBcr遺伝子の一部に9番染色体のAbl遺伝子の一部が結合していることを明らかにしたのです。この異常な融合遺伝子からは、BCR-ABLタンパク質というチロシンキナーゼ活性のあるタンパク質が作られ、これがCML発症の原因だと考えられました。チロシンキナーゼは、生体の機能を調節する重要な酵素の一つです。多細胞動物のみに存在し、細胞の分化、増殖、免疫反応などに係わるシグナル伝達