ニュースレター No,47

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授賞対象分野「環境、エネルギー、社会基盤」分野授賞業績世界最高性能Nd-Fe-B系永久磁石の開発と省エネルギーへの貢献佐川眞人博士1943年8月3日生まれ(68歳)インターメタリックス株式会社代表取締役社長概要高度....

授賞対象分野「環境、エネルギー、社会基盤」分野授賞業績世界最高性能Nd-Fe-B系永久磁石の開発と省エネルギーへの貢献佐川眞人博士1943年8月3日生まれ(68歳)インターメタリックス株式会社代表取締役社長概要高度に工業化された現代社会を支える基盤材料の一つが永久磁石です。より強力な磁石に対する期待に応えるべく1960年代に開発されたのがSm-C o(サマリウムーコバルト)系磁石でしたが、コバルトが希少資源であるため応用範囲は限られていました。こうしたなか佐川眞人博士が挑戦したのは、豊富な資源である鉄を用いた永久磁石の実現です。佐川博士は従来の磁性材料とは全く異なる視点から研究開発に取り組みました。そして、1982年にSm-Co系磁石の最大エネルギー積の記録を塗りかえる世界最強のNd-Fe-B(ネオジムー鉄ーほう素)系磁石を発見するとともに、その実用化を成し遂げました。ネオジム磁石を利用したモーターは、小型軽量で高い効率を得られるため、産業用から家庭用のエレクトロニクス製品の省電力化や風力発電等の新エネルギーの高効率化を実現するなど地球環境問題の解決にも大きく貢献しています。03より強力な永久磁石を求め続けた研究者の夢を希土類元素が実現永久磁石とは、外部から磁場や電流の供給を受けなくても磁石としての性質を保持し続ける物体のことです。古代ギリシャ時代の哲学者プラトンは、その著書『イオン』のなかで鉄を引き寄せる「マグネシアの石」について言及しており、永久磁石の存在は非常に古くから知られていました。人類が最初に自分の手で永久磁石を作ったのは18世紀のことで、当時は弱い磁石しか作れず羅針盤の指針などに用いられました。しかし、20世紀に入り電力利用が本格化すると、安定的な磁界をつくる永久磁石への期待が高まりました。そして、1917年に日本の本多光太郎によってKS鋼が発明されたのをきっかけに、1931年に三島徳七によるMK鋼の発明とそれに続くアルニコ磁石、1937年に加藤与五郎と武井武によるOP磁石の発明とそれに続くフェライト磁石など、さまざまな永久磁石が開発されました。これらの磁石が生み出した効率の良い発電機やモーターの登場などによって人類は高度工業化時代を手にしたといえます。永久磁石の開発競争に大きな転機が訪れたのは1960年代に入って希土類元素を用いた磁石についての研究が進んだことでした。希土類磁石とは、希土類元素とコバルトとの金属間化合物を主成分とする磁石のことです。最初に開発されたサマリウム-コバルト磁石は1970年代に改良が進み、磁石の性能を示す「最大磁気エネルギー積」の値を飛躍的に高めました(図1)。しかし、サマリウム-コバルト磁石には欠点がありました。コバルトもサマリウムも希少資源で値段が高く、大きい需要に応えることのできる磁石材料ではなかったのです。1970年代には、安価で強力な磁石に対する要望が高まりました。シンポジウムの講演のなかにネオジム磁石を生み出すヒントがあったコバルトを使わない希土類磁石を自分の手で発明したい……。それは、1972年に東北大学大学院博士課程を修了し国内のエレクトロニクス企業に入社した佐川眞人博士にとっても大きな夢でした。佐川博士が重要なヒントを得たのは、1978年に東京で開催されたシンポジウムに参加したことでした。シンポジウムでは磁石研究の第一人者で現在は未踏科学技術協会特別研究員を務める浜野正昭博士がコバルトを鉄に置き換えることの難しさについて講演を行いました。鉄を使った希土類磁石の課題のひとつはキュリー温度といって温度を上げていくと磁気がほぼ消失してしまう温度が低すぎることでした。希土類と鉄からなる結晶構造では、鉄同士の原子間距離が近すぎ、これが低いキュリー温度の原因になっているというのです。講演を聴きながら佐川博士の頭に一つのアイデアが浮かびました。それは「希土類元素と鉄の結晶構造の中に、炭素(C)やほう素(B)のような原子半径の小さな元素を入れれば鉄と鉄の間の距離が伸びて、キュリー温度を上げることができる」「希土類としてはサマリウムより資源的に豊富で磁気モーメントも大きなネオジムを用いるべきだ」というものだったのです。磁石の発明には2つのステップがあります。1つ