ニュースレター No,47

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めは、磁石となりえる金属間化合物を見つけること。2つめは化合物を磁石として最適な合金にするための「磁石化」です。佐川博士はシンポジウム終了後、すぐにこれらの元素を組み合わせた磁性材料の実験に取り組み、....

めは、磁石となりえる金属間化合物を見つけること。2つめは化合物を磁石として最適な合金にするための「磁石化」です。佐川博士はシンポジウム終了後、すぐにこれらの元素を組み合わせた磁性材料の実験に取り組み、数ヶ月後にはNd-Fe-B系の金属間化合物を発見しました。そして、磁石化のアイデアも次々と浮かんでいましたが、勤務先では別のプロジェクトに係わっていたため、本格的な磁石化に取りかかることができませんでした。こうしたなか、Nd-Fe-B系磁石の可能性に注目し、佐川博士を迎え入れたのが住友特殊金属(現在の日立金属NEOMAXカンパニー)でした。佐川博士は同社の開発スタッフとともに磁石化に取り組み、最初の発想からわずか5年弱で310℃という高いキュリー温度を持ち、しかも最大磁気エネルギー積が35MGOeという超高性能なネオジム磁石を作り出すことに成功したのです。このとき海外でもNd-Fe-B系磁石に注目する企業もありましたが、佐川博士らは製品化に向けていち早く新たな取り組みを続けました。例えば、磁石の製造方法としては量産効果や応用範囲の広い焼結法を選びましたが、そのためにはミクロンオーダーに粉砕された強磁性粒子を取り扱って磁石に適した微細構造を形成する高度な技術を開発することが必要でした。また、開発の途中で、商品化には耐熱性をさらに高めることや耐食性に課題があることも分かってきましたが、ネオジムの一部をジスプロシウムで置換することで耐熱性を向上させ、新たに開発したコーティング技術で耐食性も克服することができたのです。ネオジム磁石が省エネルギーを実現地球環境問題の解決に貢献1978年のシンポジウムでのひらめきが生んだ世界最強の磁石であるネオジム磁石。1980年代、90年代を通じて研究開発が進み、現在では50MGOeという夢のような性能を持つネオジム磁石も量産されています。そして、ネオジム磁石が社会に与えた影響は非常に大きなものとなりました。コンピュータの外部記憶装置であるHDDなど、さまざまなエレクトロニクス製品の高性能化を実現したほか、省エネルギー、新エネルギーといった環境技術の進歩に大きく貢献しています。ネオジム磁石を用いたモーターは、従来の誘導モーターに比べ小型軽量で高い効率を得られることから、エアコン、冷蔵庫、掃除機といった家庭用エレクトロニクス製品からエレベータ、運搬機、工作機械、建設用重機に至るまで広く用いられ省エネルギーに図1永久磁石の開発の歴史(BH)max[MGOe]605040ネオジム磁石3020サマリウム・コバルト磁石アルニコ磁石10MK鋼0KS鋼OP磁石フェライト磁石1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010希土類磁石は、従来の永久磁石と比べ格段に高い最大磁気エネルギー積を持っている。なかでもネオジム磁石は、50MGOeを超える値を示す磁石も量産化されるようになった。図2明らかになったNd-Fe-B系磁石の構造ネオジム鉄ほう素佐川博士が発見したNd-Fe-B系磁石を構成する化合物の結晶構造。ネオジムが鉄が作る層にはさまれている構造が優れた磁気特性を生み出し、重量で1%にしかすぎないほう素がキュリー温度を高めるのに役立っていると考えられている。大きく貢献しています。世界の電力需要の中でモーターの占める割合は高く、2005年の日本国内電力需要では57%を占めています。従来型モーターからネオジム磁石を用いた高効率モーターへの置き換えは、相当の電力節約につながることになります。さらに温暖化対策、新エネルギー技術として急速に普及している風力発電に広く使用されているほか、ハイブリッド自動車や電気自動車のすべてに使用されるなど、省エネルギーおよび二酸化炭素排出量削減への貢献はますます増大しつつあります。佐川博士は1988年に、研究開発企業であるインターメタリックスを設立。大学の研究者などとも連携しながらネオジム磁石の新たな可能性を切り拓いてきました。例えば、ネオジム磁石では温度特性の改善のために多量のジスプロシウムを利用していますが、ジスプロシウムはコバルトと同様な希少資源です。インターメタリックスでは、ジスプロシウムを半減~10分の1にできる新製法を開発し、環境に優しい電気自動車の普及や資源の有効利用につながると期待されています。04