歴代受賞者

1992年(第8回)日本国際賞受賞者

材料界面の科学と技術分野
固体表面の化学並びに物理の新しい発展に対する寄与

 

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ゲルハルト・エルトゥル教授(ドイツ)

マックス・プランク財団フリッツ・ハーバー研究所所長
ベルリン自由大学及びベルリン工科大学教授
1936年生まれ
授賞理由

 触媒は化学工業において極めて重要なものであり、貴金属や遷移金属等を用いた様々な触媒の開発によって今日の新しい化学工業の発展がもたらされた。また、触媒は人類が直面する環境保全においても重要な役割を果たしつつある。金属微粒子を固体表面に分散させた触媒の働きは、金属微粒子表面の化学的な性質に基づいている。その表面で起こる化学反応等を直接的に調べることが困難であったために、触媒機能が発現する機構は解明されないまま、もっぱら試行錯誤によって触媒の開発が行われてきた。

 エルトゥル教授は、近年における超高真空技術の発達、並びに、それにともなう各種の表面解析手法の発展を基礎にして、1960年代から、金属単結晶表面における水素、窒素、一酸化炭素等、代表的な反応分子の吸着状態を解明する研究を精力的に発展させた。エルトゥル教授は、低速電子線回折、光電子分光法、ペニング電子分光法等の物理的手法を総合的に駆使して、金属の表面に原子・分子が化学吸着した状態における表面構造や吸着量の変化にともなう構造変化を詳しく研究して、化学吸着層における相転移現象、吸着にともなう金属結晶表面原子の並び換え、すなわち再配列現象等を明らかにした。また、分子線の固体表面による非弾性散乱を用いて分子と固体表面の相互作用を研究する手法、キセノン原子の吸着を利用して金属表面上の反応活性点を調べる手法、低速電子線回折の動的観察によって表面構造の時間変化を追跡する方法や走査型電子顕微鏡など、新しい研究手法を開発応用して固体表面における化学反応を動的にとらえる研究を発展させた。

 上記の研究の過程でエルトゥル教授は、白金結晶表面において一酸化炭素の酸化反応が振動的に進行することを発見した。そしてそれが吸着によって誘起された金属表面の再配列と関連した非線型化学反応現象であることを見いだし、このような振動的触媒反応現象の本質を解明した。また、この反応の際に金属表面上を表面再配列が波状に伝わることを光電子顕微鏡を用いて実証した。

 上に述べたように、エルトゥル教授は、触媒反応を支配する諸因子を解明することを目的にして、金属表面における原子・分子の吸着現象や吸着にともなって生じる表面再配列を動的にとらえる研究を精力的に推進して見事な研究成果をあげ、固体表面の研究の新しい潮流を開いた。まさにエルトゥル教授が開拓した道に沿った固体表面の研究は、現在めざましい発展を示しつつある。そしてこのような研究の流れは、原子・分子レベルで触媒機能の発現機構を理解して新しい触媒や高機能の触媒を設計することを目指して進んでいる。この意味でエルトゥル教授の研究業績は、触媒の基礎的研究として高い価値をもつだけでなく、材料界面の科学と技術の発展に大きな波及効果をもつ重要なものである。

 このようにエルトゥル教授は世界に先駆けて、金属表面における化学反応を原子・分子レベルで動的にとらえる研究を展開し、その一連の優れた研究成果によって材料界面の科学並びに技術上重要な新しい研究分野を発展させた。

 よってエルトゥル教授の業績は1992年(第8回)日本国際賞にふさわしいものである。

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