歴代受賞者

1997年(第13回)日本国際賞受賞者

医学におけるバイオテクノロジー分野
がんの原因に関する基本概念の確立

国立がんセンター名誉総長 東邦大学学長
1926年生まれ
カリフォルニア大学バークレー校
生化学・分子生物学部教授
1928年生まれ
授賞理由

 がんはDNAの変化によりおこる病気である。このがん発生に関する古くからある考えは最近になり証明され確立したが、この概念の確立に杉村隆博士とブルース・N・エームス博士は極めて重要な役割を果たした。

 杉村博士は1957年に変異原物質である4-nitroquinoline-1-oxide がラットに線維芽肉腫を発生させることを見出した。1966年には変異原物質であるN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)の皮下投与によりラットに線維芽肉腫が発生することを発見し、 1967年にはMNNGのラットへの経口投与によって胃がんを発生させることに成功した。エームス博士は長年のサルモネラ菌を用いたヒスチジン合成系の研究を基に、1971年サルモネラ菌を用いた試験管内での効率的な変異原物質の検出法を作製した。この方法に改良を加え、杉村博士とエームス博士はその後それぞれ独立に多くの発がん物質が変異原物質であることを明らかにしている。このエームス博士が開発したいわゆるエームス試験は、世界中の研究機関、企業や環境規制を行う公的機関で、環境中の発がん物質、変異原物質の検索の基本技術となり、また、発がん物質の代謝活性化の機序の解明、抗変異原物質の検索などにも広く用いられている。杉村博士はこのエームス試験を用いて、日常摂取している加熱食品中にヘテロサイクリックアミンの構造を有する変異原物質を多く分離・同定し、これらの変異原物質をラット及びマウスに投与して発がん物質であることを証明した。さらに、これらの発がん物質で発生したがんが実際に遺伝子変化をおこしていることも証明している。杉村博士は多段階発がんの機構解明やがん予防に研究を展開し、エームス博士はがんにおける内因性の活性酸素の関与 や老化の機構解明に研究を展開した。

 杉村博士とエームス博士は、化学物質の持つ発がん性と変異原性の関係を明らかにし、環境中の発がん物質をその変異原性を指標に同定できることを明らかにし、がんの発生の原因またその予防に極めて重要な貢献をし、また、がんはDNAの変化により発生するという発がんの基本概念の確立に基盤的な貢献をした。杉村博士とエームス博士を1997年の日本国際賞の受賞者としてふさわしく、ここに推薦する。

 

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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