歴代受賞者

2000年(第16回)日本国際賞受賞者

生体防御分野
免疫グロブリンEの発見とアレルギー発症機序の解明

 

ラホイアアレルギー免疫研究所名誉所長
1925年生まれ
授賞理由

 喘息、花粉症、食物や薬アレルギーに代表されるアレルギー疾患は、今や世界人口の約20%が罹患し、なお患者数が増加を続けている人類に課せられた大きな問題である。アレルギー現象は古くから知られていたが、その実態は永らく不明であった。

 石坂博士は、アレルギー現象の分子レベルの解明を目指し、多くの困難を克服し、ついに1966年その原因物質として第5番目の免疫グロブリンE(IgE)を発見し、アレルギー発症機序の分子レベルでの理解を可能にした。この発見に続き、1969年スウエーデンのS.G.O.JohanssonらがIgE骨髄腫を報告し、他の免疫グロブリンと同様、IgE産生細胞の腫瘍の存在を証明し、新しい免疫グロブリンであることが裏付け られた。

 他の免疫グロブリンと異なりヒトの血清中に百万分の1グラムしかない微量のIgEを同定するには、この蛋白に特異的な抗体を作成し、生物活性を指標として分子を追及するという石坂博士の卓越したアイデアがあった。この手法は、その後、超微量免疫機能物質であるサイトカイン研究に広く利用された事から分かるように、目に見えない微量の蛋白を同定する研究手法として後世の研究の発展に与えた影響は計り知れない。

 さらに、石坂博士は、2分子の抗体の架橋により抗原・抗体結合物が生物活性を発揮することを見いだし、IgEから始まる多彩なアレルギー症状の進展過程を細胞・分子生物学的基盤で明らかにした。すなわち、IgEはマスト細胞,好塩基球の細胞表面のIgE受容体に結合し、その細胞表面で抗原・IgE結合物が作られた結果、2分子のIgE受容体が架橋され、細胞内にシグナルが伝達されることを証明したもので、現在、多くの細胞膜受容体のシグナル伝達に受容体架橋が必要である事が証明されており(架橋説)、この発見はアレルギー反応の機序解明のみならず、細胞生物学の基本原理に関する知見を与えたといっても過言ではない。この意味で、石坂博士の業績の重要性と他の研究に与えた影響の大きさゆえに特筆されるものがある。

 また石坂博士の研究成果は,今日のアレルギー疾患の診断・治療に反映し、大きな貢献をしている。基礎研究が、これほど短期間のうちに臨床医学に反映した事例は前例がない。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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