歴代受賞者

2011年(第27回)日本国際賞受賞者

「情報・通信」分野
UNIXオペレーティングシステムの開発

ベル研究所特別名誉技師
(1941-2011)
グーグル社特別技師
1943年生まれ
授賞理由

 コンピュータハードウェアはソフトウェアによって多様な機能を発現する。そのソフトウェアを実行する基盤ソフトウェアがオペレーティングシステムである。デニス・リッチー博士ならびにケン・トンプソン博士は、1969年にUNIXと呼ばれる先進的なオペレーティングシステムを開発した。当時のオペレーティングシステムは複雑で無秩序に大規模化していたが、UNIXは徹底した軽量高速化を追求した。技術的には、コンピュータ上の情報や周辺機器等の全ての資源を、ファイルと呼ぶ簡潔なデータ入出力機構として抽象化し、統一的に扱うことを可能とすることにより、拡張性の高い簡素化を達成した。加えて階層構造をファイルシステムに導入し、使い易さを格段に向上させることに成功した。その命名法はウェブ上の膨大なデータを表現するためのURLに採用される等、今日も広く利用されている。

 UNIXはオペレーティングシステムを記述するためのプログラム言語であるC言語と共に開発された点においても特徴的である。C言語は現在も非常に広く利用されており、C言語でUNIX自体を記述することにより、可読性を著しく向上し、同時に高い移植性を達成した。その結果UNIXは組込みシステムからパーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータまで幅広く用いられるに到った。

 1975年に第6版UNIXはソースコードと共に大学・研究機関に配布され、オペレーティングシステムの生きた教材として広く利用され、情報分野全体の発展に大きく貢献した。同時に、ソースコードの改良や機能拡張を利用者間で共有する文化が芽生え、UNIXは今日のオープンソース文化の原点を形成したと言える。

 現在の情報分野の基礎技術にはUNIXが母体となって生まれたものが数多い。中でも特筆すべきはインターネットである。カリフォルニア大学バークレー校は第6版を拡張したバークレー版(BSD)を開発し、インターネット通信規約(TCP/IP)を実装した。初期のインターネットでは、UNIXシステムが標準的に使われ、UNIXはインターネットの実現を大きく支えてきた。インターネット文化がUNIX研究者達によって強く牽引されてきたことは明らかである。

 このように、今日に到るコンピュータサイエンスならびにIT産業の展開を振り返る時、UNIXの根幹的貢献は比類無きものであり、デニス・リッチー博士並びにケン・トンプソン博士の業績は、「情報・通信」分野における貢献を称える2011年日本国際賞に真に相応しいものである。

 

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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