歴代受賞者

2011年(第27回)日本国際賞受賞者

「生命科学・医学」分野
インターロイキン6の発見から疾患治療への応用

大阪大学名誉教授、元総長
1939年生まれ
大阪大学教授、医学系研究科長・医学部長
1947年生まれ
授賞理由

 岸本忠三博士と平野俊夫博士はBリンパ球(免疫機能の中心的役割を担う細胞の一つ)に作用して抗体産生を誘導するサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をする分子)であるインターロイキン6(IL-6)を純化し、1986年に遺伝子をクローニングした。さらに両博士はIL-6 受容体の遺伝子のクローニングに成功し、IL-6 受容体はIL-6 特異的結合分子と、他のサイトカイン受容体に共通のシグナル伝達機能を持つ分子から構成されることを明らかにした。その後IL-6 は抗体産生を増強するのみならず、炎症の急性期において肝臓でのC反応性タンパク質(CRP)(体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質)の産生を促し、さらに多発性骨髄腫の増殖因子として働くなど多様な機能を持つことを明らかにした。また両博士はIL-6 が細胞表面から核内へどのようにして情報を伝達するか、その複雑な経路を分子レベルで詳細に明らかにした。

 さらに両博士はIL-6と炎症との関連、種々の疾患との関連に注目し、IL-6を過剰に発現する遺伝子改変マウス、IL-6遺伝子を破壊した遺伝子改変マウスや変異受容体を発現している遺伝子改変マウスを作成しIL-6の生理機能を個体レベルで解明した。また関節リウマチ患者の関節液中にはIL-6が多量に存在することを見出すなど、IL-6 が関節リウマチを初め各種疾患の病態に重要な役割を果たすことを明らかにした。こうした基礎的なIL-6に関する研究をもとに、岸本博士は製薬会社と共同でIL-6 の作用を阻止するIL-6 受容体に対するヒト化抗体トシリツマブを開発作製し、キャスルマン病 や関節リウマチの治療薬として有効であることを証明した。トシリツマブは関節リウマチ患者に対し、2008 年に我が国で承認以来、現在では欧米をはじめ世界70カ国以上で承認されている。

 このように両博士はIL-6 の発見から始まり、IL-6の受容体やシグナル経路における世界をリードする研究を続け、サイトカインの細胞内シグナル伝達機構を明らかにした。さらにIL-6がまさに炎症性サイトカインの代表分子であることを明らかにしただけでなく、一つの分子の機能によってそれまで謎であった多くの難治性疾患の病態を説明できることを示した。これら、基礎研究から治療法の開発までを一貫して発展させた業績は、医学・生物学領域の研究でも歴史に残る業績であり、世界中で高く評価されている。こうした優れた業績を挙げている両博士は、「生命科学・医学」分野への貢献を称える2011年日本国際賞にふさわしいと考える。

 

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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