歴代受賞者

2014年(第30回)日本国際賞受賞者

「生命科学」分野
遺伝子発現の制御機構としてのヒストン修飾の発見

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デビッド・アリス博士(米国)

ロックフェラー大学 ジョイ・アンド・ジャック・フィッシュマン記念教授
1951年生まれ
授賞理由

 細胞核内でDNAと結合してヌクレオソームを形成するヒストン蛋白質の翻訳後の化学修飾はかなり昔から知られていたが、その生理的な意義は長い間謎であった。この謎を解き明かしたのがデビッド・アリス博士である。同博士は、モデル真核生物を用いてヒストン蛋白質アセチル化酵素を生化学的に世界で初めて同定し、ヒストン蛋白質の修飾によるクロマチンの構造変化が遺伝子の活性制御そのものであるという転写制御機構の解明に決定的な役割を果たし、全く新しい研究分野を切り開いた。さらに、ヒストン蛋白質の修飾による転写制御機構の発見は、DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現の変化が細胞分裂を超えて継承される現象を研究する学問領域であるエピジェネティクスにも大きなインパクトを与えた。

 近年の次世代シーケンサーの登場によって、ヒストン蛋白質の様々な化学修飾による遺伝子機能制御機構は急速に明らかになりつつあり、遺伝、発生、環境、そして、疾患を繋ぐ重要な研究分野になっている。しかも同博士が示したように転写制御を司るヒストン蛋白質の修飾・脱修飾は酵素が触媒する化学反応であり、低分子の特異的阻害剤による治療標的としても大いに発展が期待できる。実際、ヒストン蛋白質のアセチル化を制御する薬剤は、既に米国において皮膚T細胞リンパ腫の治療薬として承認され、臨床の場で使用されている。また、ヒストン蛋白質の化学修飾は幹細胞やリプログラミングにおいても重要な役割を担っていることが明らかになっており、再生医療においても将来の治療応用が期待される。

 以上のように、アリス博士のヒストン蛋白質アセチル化酵素の発見により、ヒストン蛋白質の化学修飾と遺伝子活性制御とが決定的に関連付けられ、それ以来、ヒストンの様々な修飾による遺伝子活性制御機構の概念が確立した。

 同博士は、その後もこの分野を牽引し続けており、ヒストン蛋白質の様々な修飾の意義の解明に多大な貢献をされ、生命科学の進展に大きく寄与した。このような優れた業績を挙げたデビッド・アリス博士は「生命科学」分野における貢献を称える2014年日本国際賞にふさわしいと考える。

【業績解説文】

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受賞者

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