受賞者

2015年(第31回)Japan Prize受賞者

「医学、薬学」分野
遺伝子治療の概念の提唱とその臨床応用

カリフォルニア大学サンディエゴ校
医学部小児科教授
1935年生まれ
コレージュ・ド・フランス教授、
イマジン研究所所長
1949年生まれ
授賞理由

遺伝性疾患や数々の難治性疾患に対する遺伝子治療は、21世紀に相応しい革新的先端医療である。ここ数年、多様な難治性・致死性疾患に対する劇的な臨床効果が次々に報告され、臨床応用成功という大きな流れの中で、歴史的に決定的な役割を果たしたのがフリードマン博士とフィッシャー博士である。

フリードマン博士は、1970年代に遺伝子治療の概念をいち早く提唱し、造血幹細胞遺伝子治療の基本となる動物モデル実験でその有効性を実証し、さらに現在の遺伝子導入用ベクターのコア技術開発に重要な貢献を果すなど、その後の遺伝子治療基盤開発研究への道を拓いた。さらにこの領域の倫理問題に関しても第一線で、オピニオンリーダーとして40年にわたって活躍し「遺伝子治療の父」と呼ばれている。

一方、遺伝子治療が臨床的に劇的効果を発揮することを世界で初めて実証したのがフィッシャー博士である。フィッシャー博士は、致死的なX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)の患児に造血幹細胞遺伝子治療を実施し、2000年に発表されたその劇的な効果は、世界中の臨床家と医学研究者達に強い衝撃を与えた。この遺伝子治療は一部の症例で白血病が発生し一時的には停滞したが、フィッシャー博士らはその原因をつきとめ安全対策を講じ、長期フォローアップによって、遺伝子治療の効果は従来の造血幹細胞移植療法を凌ぐことを示した。同博士は、さらにレンチウイルスベクターを用いた造血幹細胞遺伝子治療で、副腎白質ジストロフィーの臨床症状の進行を抑えることも明らかにした。

さらにこのような成功例に加え、アデノシンデアミナーゼ欠損症の患児も、造血幹細胞遺伝子治療により通常の生活が可能となっており、またレーバー先天性黒内障、パーキンソン病、血友病B、リポタンパク質リパーゼ欠損症などで、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療の有効性が相次いで報告されている。

以上のように、多くの困難を乗り越え今日花開いた遺伝子治療の概念を提唱し、初期の遺伝子治療基盤研究を牽引したフリードマン博士と、遺伝子治療の劇的効果を致死性遺伝性疾患で実証し、夢の治療法といわれた遺伝子治療を現実のものとしたフィッシャー博士の果たした役割は極めて大きく、両博士の功績は「医学、薬学」分野への貢献を称える2015年Japan Prizeにふさわしいと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

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Japan Prize 30年の歩み

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