歴代受賞者

2016年(第32回)Japan Prize受賞者

「生物生産、生命環境」分野
ゲノム解析手法の開発を通じた近代作物育種への貢献

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スティーブン・タンクスリー博士(米国)

コーネル大学名誉教授
1954年生まれ
授賞理由

 スティーブン・タンクスリー博士は、ゲノム解析による作物の分子連鎖地図の作成、果実の大きさなどの生産性関連遺伝子を同定する革新的技術の開発、そして新規な作物育種技術の開発など、枢要な業績を挙げている。

 博士は1980年代および90年代に、トマトやイネにおいて、分子生物学技術を活用し、作物の染色体地図作成に新展開をもたらした。次に博士は、種子数、耐冷性、開花期などのように、複数の遺伝子や環境要因が複雑に作用するため解析が不可能であった量的形質遺伝子(Quantitative Trait Loci: QTL)について、染色体における位置情報(DNAマーカー)とQTLを関連づける方法を開発した。さらにトマト野生種の栽培化の過程で、特定のQTLの変異が果実の重量増大に寄与したことをQTLの単離により証明した。野生種が内包する自然変異が、今後の作物開発に重要であることを指摘し、野生種の遺伝子の評価手法を開発した。これらのオリジナリティ溢れる業績は、その後の作物や家畜の分子連鎖地図作成、農業上有用なQTLの同定、そして全ゲノム配列決定など、関連する研究の広範かつ急速な発展に結びついている。

 博士の研究以前、交配育種の成否は経験と勘と偶然に依存していた。博士の研究に端を発するDNAマーカーの開発とその利用による育種 (Marker Assisted Selection: MAS) は、ゲノム情報に基づき、計画的に作物が改良できる新機軸の技術である。ゲノム情報と育種を融合させたこの技術は、育種期間の大幅な短縮や品種開発の確実性の利点から、博士の研究に影響を受けた世界中の研究者を巻き込み、多くの作物で利用が進んでいる。今ではMASは、作物開発のみならず家畜改良にとって今ではなくてはならないものになっており、顕著な産業界への功績である。

 このように、作物のゲノム情報の理解について理論的基盤を構築し、広く浸透させるとともに、世界各国における近代作物育種を通して食料の安定生産に卓越した寄与のあるスティーブン・タンクスリー博士の業績は、「生物生産、生命環境」への貢献を称える2016年日本国際賞にふさわしいと考える。

【業績解説文】

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