ストックホルム国際青年科学セミナー

2018年派遣学生

土山 絢子
東京工業大学 理学部地球惑星科学科
 

SIYSS参加を通じて感じたこと

2018年12月、私はストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS)に日本代表のうちの1名として派遣していただきました。1987年以降、SIYSSへは国際科学技術財団から例年2名の日本人学生が派遣されています。派遣先での主な活動として、今年度も現地の高校生に向けて研究発表を行い、ノーベル賞のレセプションや授賞式など数々のノーベル賞関連行事に参加するという貴重な体験をさせていただきました。派遣中に学び、そして気づいたことについて、以下の3点に絞ってご報告させていただきます。

Ⅰ. 他の参加者との交流で学んだこと

SIYSSで出会った参加者(19か国から25名)の半分は、まだ大学での専攻が決まっていない18歳~20歳の学生でした。彼らにSIYSS応募に至る経緯を尋ねてみると、大学入学以前に各国の教育プログラムや科学コンテストに応募・参加し、実績を積んできた経験がある人がほとんどでした。科学に対する知的好奇心が旺盛であることはもちろん、自分の研究テーマとは全く異なる分野についても興味をもって議論を行う様子はとても印象的でした。また、母国語が英語でない国から参加している学生でも、流暢な英語を話し、自分の意見を適切な根拠を用いて力強く主張できる姿を見て、大変刺激を受けました。しかし、そんな彼らの姿を目の当たりにして、一方では、日本の高校生も世界のレベルに負けていないのではないか、という思いが私の脳裏をかすめました。なぜそのように感じたかというと、私は中学、高校の頃より科学教育のセミナーやキャンプに参加させていただいた経験があるからです。現在も、OGとしてそれらの活動のサポートを続けているのですが、SIYSSの参加者同様に、日本の高校生たちも誰よりも熱心に研究に取り組み、熱く議論を交わし、真剣に科学と向き合っています。SIYSSのような素晴らしい経験ができるセミナーへの参加の前提に、大学入学以前に科学プログラムに参加する意義を改めて気づかされ、今後も、理数系分野に興味をもって挑戦しいている中高生に対して継続的にサポートを続けていきたいと思いました。

写真1 世界から集結した25名の若手科学者

Ⅱ. 地震学を日本で研究する意義

現地では、SIYSSセミナーという研究発表の舞台で個人の研究を発表する場が設けられています。私は学部1年の秋から続けてきた深発地震の研究について、約300人の高校生の前で口頭発表を行い、それ以外の時間でポスター発表も行いました。多くの日本人にとって「地震」は身近な現象である一方、スウェーデンの高校生にとってはほとんど経験したことがなく、馴染みのないトピックです。このテーマについて、現地の高校生にとっていかにわかりやすく、興味をもってもらえるような発表ができるかが今回の派遣での私の課題でした。ところが、実際に現地で発表をしてみると、多くの高校生は「自分の知らない分野だから興味を持たない」のではなく、「自分の知らない分野だからこそ知りたい」という姿勢で数多くの質問を投げかけてきました。高校生の勢いに圧倒されながらも、できる限り多くの質問に答え、一通り話が終わった後には用意したクイズを出題して、高校生にも地震について考えてもらう機会を設けました。その結果、多くの学生から「地震について知ることができてよかった」という感想をもらうことができました。セミナーの時間に限らず、他の国の参加者と研究の話をしてみると、自国に緻密な観測網が配置されていることや、地震学を専攻できる大学機関が多数設置されていることは、地震大国の日本ならではの状況であることを強く認識しました。これらの体験を通じて、「地震学の研究を日本で進めることに意義がある」ことを再認識しました。また、日本の研究結果を世界に還元していく必要性にも気づくことができました。

写真2 SIYSSセミナー口頭発表の様子

写真3 SIYSSセミナーポスター発表の様子

Ⅲ. 世界に向けて研究成果を伝える必要性

最後に、世界に向けて研究成果を伝えていくことについて、主にノーベル賞関連行事への参加時に感じたことを記します。ノーベル賞関連行事では、一般向けのノーベルレクチャーをはじめ、レセプションや授賞式など参加したすべてのイベントが非日常的で、驚きと発見の連続でした。実際に、複数の受賞者と交流できたことで、研究者としての姿だけでなく、研究に対する熱意や周囲の人への感謝の心など、メディア越しでは伝わらない受賞者の素顔を見ることができました。その中でも特に印象に残ったのは、今年度のノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑先生のノーベルレクチャーでの姿でした。長年の基礎研究の成果を発信し、世界を舞台にして賞賛を受ける先生の姿を拝見し、同じ日本人としての誇りを感じ、研究者としての憧れを抱きました。本庶先生によると、人間の身体の構造や機能はとても複雑であるため、近年の技術の進歩によってようやくそのメカニズムが解明されるようになってきたそうで、確かに今年度の受賞者の業績は、物理学賞は網膜の手術に、化学賞は遺伝工学に応用されているものであり、物理や化学の発展によって生み出された新しい技術によって生物分野の研究が進んでいる様子がよくわかります。私の研究対象は地球であり、まだまだわからないことがたくさんありますが、もし技術が発展して地球内部の様子を詳細に調べることが可能になれば、地球内部に存在する新たな資源を掘削できるようになったり、地下深くに潜む断層の状態を調べて地震のメカニズムを解明できるようになったりと、他の学術領域の成果を利用しながら地球科学分野の研究を進め、社会に貢献できるのではないかと感じました。グローバル化が進むこれからの時代においては、基礎研究の成果は国内だけにとどまらず、より多くの人の目に届けるような心持で自ら発信することで、その結果をどのように受け止め、どのように実社会へと還元していくべきなのか、世界中の人々の力を借りて研究の先にある未来を創る必要があると気づきました。

写真4 ノーベルレクチャー(生理学・医学賞)

最終日に参列した授賞式では、ノーベル賞受賞者の名前が呼ばれ、ファンファーレとともにメダルが手渡される瞬間、とても感動しました。どの分野もはじめは基礎研究から始まり、失敗を重ねながらも人類にとって有益な成果を生み出し、その結果がこの舞台で認められるその瞬間は、一生忘れられない大切な思い出となりました。今回、私を派遣してくださった国際科学技術財団のみなさま、現地で温かく迎えてくださった運営のみなさま、出発までたくさんのアドバイスをくださった研究室の先生方、大学関係者のみなさま、今年度の派遣生と昨年度以前の派遣生のみなさま、支えてくれた家族と友人のすべてに、この場をお借りして感謝申し上げます。


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