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李 憲俊

衛生微生物研究センター
所長

すまいと健康のカビ対策

骨子

  1. カビとは
  2. カビの発育過程
  3. カビの発育条件
  4. 室内の主要カビ
  5. カビの有害性と有益性
  6. 室内カビによる健康障害
  7. カビ対策

要旨

 日本の大部分は温帯湿潤気候であり、夏季は高温多湿となることから、カビが生育しやすい環境といえます。そのため、昔から日本人は衣食住など生活面すべてにカビの影響を受け、カビと共に暮らしてきました。味噌、醤油、酒、カツオ節などの食品に代表される、カビを有効利用する知恵は、このような気候風土から生み出されてきたものと考えられます。
  一方で、カビには有害な面もあります。日常的に経験する食品や住環境のカビ汚染のほかにも、人や動物のカビ感染症(水虫、肺炎など)、カビが産生する毒(アフラトキシン、シトリニンなど)による中毒事故、アレルギーの原因(抗原)、また野菜や果樹などの植物に病気(灰色カビ病、うどんこ病など)を起こすことも知られています。
  日常生活の中で遭遇するカビ被害の多くは、生活環境と深い関わりがあります。例えば、昨今一般的になった機密性の高い住宅は、外気の影響を受けにくいため夏は涼しく、冬は暖かく、一年を通じて快適な生活を可能にしました。しかし、このような環境は、カビの生育にとっても好条件であり、カビによる汚染被害の増加の要因となっています。さらに、生活環境におけるカビ発生による損害は物質面に止まらず、カビによるアレルギー性疾患など、健康被害の増加の原因にもなっています。
  生活環境におけるカビの汚染被害が、他の微生物汚染と大きく異なる点は、肉眼で確認可能なところにあります。例えば、浴室のタイル目地や壁紙に増殖したカビが目につくようになると、不衛生な印象から速やかな除去を試みる人が多いと思います。生活環境にみるカビの多くが有色菌で、増殖すると目につきやすいこともあり、カビの発生に過剰反応を示すケースも少なくありません。一方で、目に見えることで身近に感じやすく、有害性を認識しにくい、あるいは目に見えさえしなければカビは存在しないものと見なしてしまう傾向もみられます。このように、カビによる汚染被害は、外見的印象や思いこみに左右され、正しく認識されにくい特徴があります。カビに対する誤った認識は、カビという生物そのものに対する基礎知識や理解不足が原因になって生じていると考えられます。
  そこで、この講演では、「カビはどのような微生物なのか」、「カビはなぜ我々の住環境に発生してしまうのか」、「カビが発生するとどのような悪い影響があるのか」、「カビを発生させないためにはどのようにすればいいのか」についてわかりやすく説明します。快適かつ健康な生活をするためのお役にたてれば幸いです。

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