宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙科学研究本部(ISAS) 固体惑星科学研究系
助教
月惑星探査プログラムグループ(JSPEC)
併任
(1) 私たちの地球や生命が生まれた歴史を紐解くには、地球や月や火星や木星など大きな天体だけを見ても根本にはたどり着けない。
(2) 太陽系の始まりの材料と構造と環境の情報を残している化石のような天体、小惑星や彗星をこそ統計的に調べる必要がある。
(3) これまで人類は、望遠鏡による小惑星観測と顕微鏡による隕石・宇宙塵分析を行って、この課題に挑んできたが両者を橋渡しすることができていなかった。
(4) 2003年に打ち上げられた日本の「はやぶさ」探査機は、人類史上初めて地球の重力圏外での往復探査を行い、小惑星のかけらを地球に持ち帰る技術の確立に挑戦中である。
(5) 「はやぶさ」は2005年にわずか500mほどの小惑星イトカワに到着し、惑星の卵である微惑星の姿を初めて科学的直接観測によって明らかにし、「クレーターが欠如した岩盤むき出しの微小天体の姿」や「瓦礫の寄せ集め構造の発見」など、従来の太陽系科学を一新させ、惑星成長に関する知識を飛躍的に進歩させた。その成果は世界中で評価され、Science特集号の発刊や多数の国際会議での招待講演や海外学術会議からの表彰などを受けた。
(6) 現在は来年夏にオーストラリアに小惑星表面試料を持ち帰るべく、毎日帰還運用に励んでいるところである。
(7) 「はやぶさ」帰還後もこの技術をさらに伸ばして、世界最先端の科学目標と技術的挑戦を掲げつつ、将来の地球衝突問題や有人深宇宙飛行の先駆けとしても、日本の独創で人類の宇宙開発史と太陽系科学に貢献できる「小天体サンプルリターン探査」を、戦略的にシリーズ化させて参りたい。
※セミナーで使用したパワーポイントの映像はこちら(6MB PDF)