ストックホルム国際青年科学セミナー

2019年派遣学生

石川 太陽
広島大学大学院国際協力研究科
 

今回、SIYSSに日本代表学生のうちの1名として派遣させていただき、高校生に向けての研究発表やノーベルウィークの様々なイベントへの参加など非常に貴重な経験をさせていただきました。派遣を通して、非常に多くの学びを得ることができましたが、本レポートでは以下の3点に絞ってご報告させていただきます。
・伝えることの重要性
私がSIYSSに応募した動機の1つとして、自分の研究をスウェーデンの高校生に発表し、議論することができるということがありました。これまでは自分の研究を発表し、議論する機会は研究室内や学会等に限られていたため、今回大人数の高校生に向けて研究を発表できることを楽しみにしていました。
 しかし、セミナー本番までの発表資料の準備や現地担当者からの添削を受ける過程で、自分の伝えたい概念を上手く伝えることの難しさに直面しました。研究室内では前提知識となっている部分も、分野の違う人や高校生にとっては不明瞭な部分として捉えられてしまうからです。そこで、本番までに伝える概念や使用する表現に気をつけながら発表準備を行い、セミナー当日も高校生との対話を繰り返しながら、分かりやすく伝えるためにはどんな説明方法が良いかを試行錯誤しました。
 その結果、多くの高校生に自分の伝えたい概念や知識を理解してもらい、多くの議論を行うことができました。例えば、交通投資のプロジェクト評価を行う時に、時間短縮や環境への影響も当然ながら、景観への影響も考えないのか?という質問を受け、いくつかの場所では景観への影響も考慮に入れていることや、それぞれの便益をどのように計算しているか等の議論も行うことができました。その他にも、日本の新幹線やリニアモーターカーの例を使い、どのような地域にどのような交通を導入するのが市民にとって最善か、というとても難しい課題を話しあうこともできました。
 以上のように、専門の異なる人にも理解できるように、前提知識や研究の最も重要な部分を分かりやすく説明することで、多くの高校生と有意義な議論をすることができました。この学びは研究発表に限らず、人生の多くの場面で生かせる貴重なものであると感じています。
・全体像を捉えることの重要性
このセミナーに応募したもう1つの動機として、科学技術の実社会での活用に対する知見を学びたいということがありました。自分の専門である交通工学は、人や物の動きを主な対象として、新しい技術や政策の導入を通して、社会にとって望ましい姿を見出し、社会をその方向へ誘導することを主な目的としているため、科学技術をどのように社会に適用するかを考えることが重要であると考えたからです。
 これに関しては、吉野先生ご本人より多くの知見を得ることができました。まず、吉野先生のノーベルレクチャーを通して、リチウムイオン電池を実際に社会に広める際に課題となった点や、リチウムイオン電池の発展によって今後の社会がどのように変わるのかということを学ぶことができました。また、吉野先生と直接お話をした際に、「基礎科学と社会実装の研究を行う時に意識していることは何か」をお聞きしたところ、社会の全体像を捉え、基礎科学と社会への実装を行き来しながら、少しずつ精度を上げていくことが重要であると教えていただきました。また、経験、権限、年齢を考慮すると、何かを成し遂げるためには35歳がターニングポイントであり、その年齢に向けて積極的にチャレンジすることが重要であるとの言葉も頂きました。また、企業と大学機関のどちらで研究を実施するべきかという問いについては、どちらも自分自身の研究への姿勢次第であるとのアドバイスを頂きました。
 私は今後、交通インフラに関する様々な技術を活用した社会問題の改善に取り組んでいきたいと考えていますが、吉野先生のように社会や研究分野の全体像を捉えつつ、自分にできることは何かを考えながら多くのことにチャレンジしていきたいと強く思いました。
・共通語としての科学
最後に、世界各国から参加した若手科学者との交流を通して、共通言語としての科学の意義を感じることができました。今回、世界19カ国から高校を卒業したての学生から博士課程の学生まで本当に幅広い学生が集まり、セミナーが実施されました。専門分野や研究内容としても、材料の研究を実施している学生や星の動きを研究している学生、数学で新たな概念を見つけ出そうとしている学生など非常に幅広い分野の学生が集まりました。そのような多様な状況においても、各々の学生の共通項目として、科学が好きであること、そして取り組んでいる研究分野や学問分野に誇りを持っており、自信を持って自身の研究発表を行なっていることを感じました。そのような共通語のおかげで、お互いの研究についての議論を始め、とても有意義な時間を過ごすことができました。

以上のように、今回の派遣を通して非常に貴重な学びを得ることができました。この学びを今後の人生において最大限に生かしていきたいと思います。最後になりましたが、本セミナーへの派遣に際しまして多くのサポートを頂いた国際科学技術財団の皆様、そして快く送り出して頂いた広島大学の関係者の皆様に感謝の意を表します。

口頭発表の様子

SIYSS2019参加者との写真


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ストックホルム
国際青年科学セミナー

受賞者発表記者会見

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