Japan Prize

財団概要

JAPAN PRIZE:賞の意義 (会長挨拶 )

Hiroyuki Yoshikawa
矢﨑 義雄

人類の平和と繁栄は、世界中の人々にとって共通の切なる願いである。人類の歴史を振り返る時、そこに科学技術が果たしてきた役割は計り知れない。

Japan Prizeは、全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な科学技術の成果を挙げてその進歩に大きく寄与し、それによって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に授与されるものである。1985年に第1回の授賞式が行われて以来、本年の第39回までの間に、世界14ヶ国108名の卓越した科学者が受賞している。Japan Prizeの大きな特徴は、その創賞の理念にはっきりと掲げられているように、選考の際に「社会への貢献」を非常に重視していることである。そうした観点からJapan Prize 108名の受賞者の業績系譜をみると、まさに科学技術の進歩と人類の平和と繁栄の重なりの歴史を示していると強く感じる。

本賞創設の経緯を振り返ると、戦後、日本が急速な復興と発展を成し遂げることができたのも、世界中の多岐にわたる科学技術の成果を享受できたからこそであり、なんとしても「国際社会への恩返し」をしたいという深い感謝の気持ちがあったことがわかる。

初代会長の松下幸之助をはじめ、賞創設に携わった多くの先人たちのそうした強い願いと期待は、初代会長がその思いをしたためた「畢生の志」の中に息づき、現在も我々に綿々と受け継がれている。

毎年4月に開催される授賞式には、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、また立法、行政、司法の三権を代表する方々や学界、官界、経済界など各界からもご出席をいただいているが、こうした多くの方々のご理解とご支援があって、今日のJapan Prizeがある。深く感謝申し上げたい。

これまでそうであったように、これからの未来においても科学技術の進歩が、人類の平和と繁栄にとって大きな支えになり続ける。そうした強い願いと期待を心に、Japan Prizeは人類の平和と繁栄に貢献する科学技術の更なる発展に少しでも貢献できるよう努力していきたい。

会長 矢﨑 義雄

JAPAN PRIZE:人類の平和と繁栄のために (理事長挨拶)


小宮山 宏

地球は宇宙に浮かぶ無数の星のひとつである。その小さな星が生まれてから45億年の時が経過し、直近の一瞬ともいうべき数百万年前に私たちの祖先が誕生した。以来人類は種としての繁栄を続け、文明を発展させてきた。人のくらしも豊かになっていったが、その歩みは極めて緩慢であった。ところが今から二百年ほど前に産業革命が起こり、状況が一変した。特に20世紀に入って以降、発展の歩みは著しく加速し、人々のくらしは豊かさを増した。その発展をけん引したのは科学技術である。

例えば、人は長生きになった。実はその歴史の中で、ほぼすべての人々は短命であったのだ。20世紀初頭に入っても人の平均寿命は31歳、それが現在すでに72歳に達している。積年の夢であった長寿を実現したのだから、文明は成功しているといってよいだろう。

Japan Prize(日本国際賞)は、人類の平和と繁栄に貢献する科学技術の成果を表彰するために創設された。これまでの授賞の歴史をたどるとき、私たちが現在享受するくらしの豊かさと、その実現に果たした科学技術の役割を実感することができる。今後ともその意義を確信し、事業の継続を図る所存である。

一方で、地球とそこに生きる人の未来に不安が生じていることを否定しえない。私たちは、美しい地球を維持することができるだろうか。人類は、一人も取り残すことなしに、繁栄を続けることができるだろうか。それこそが今、私たちに課せられた基本的な問いなのである。これからのJapan Prizeが、こうした問いに答えるものになるであろうことを確信している。

科学の発展は膨大な知の蓄積をもたらした。知が人類のかけがえのない財産であることは言を俟たないが、あまりの膨大さゆえに、知の全体像を把握することが困難になっている。このことが、豊かさを増した社会の複雑化、豊かさの代償としての地球の変化とあいまって、私たちの行く末に不安をもたらしている。つまり、科学の発展そのものが未来への不安の源泉なのだから、科学者はこの問題に正面から対峙すべきである。様々な課題の解決に向けて、細分化した知の分野を超えて取り組まなければならないだろう。科学技術が悪しく用いられる可能性を否定しえないとしても、それを解決する知はありうると私たちは確信する。

文明と科学技術の行く末に思いを馳せつつ、1985年の第1回授賞式以来、本賞に対し格別のご厚情を賜った上皇上皇后両陛下に心からの謝意を表するために、2019年、「平成記念研究助成制度」を創設した。意欲ある研究者にチャレンジを促す一助となれば幸いである。

今後とも当財団は、顕彰や助成、啓発を通じて、人類の平和と繁栄に貢献していきたい。

理事長 小宮山 宏

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