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2013年(第29回)日本国際賞受賞者決まる
集積回路微細化に貢献する半導体製造技術を開発したウイルソン、フレシィエ両博士と
未知の深海の生態系を明らかにし、海洋生物センサスを立ち上げたグラッスル博士に

公益財団法人国際科学技術財団(理事長 矢﨑義雄)は本日、2013年(第29回)日本国際賞(ジャパンプライズ)の受賞者を発表しました。今年の授賞対象分野は「物質、材料、生産」と「生物生産、生命環境」の2分野です。前者では「半導体製造に革新的なプロセスをもたらした化学増幅レジスト高分子材料の開発」に携わった米国のグラント・ウイルソン博士(73歳)とジャン・フレシィエ博士(68歳)の両氏に、また、後者では「深海生物の生態と多様性の研究を通じた海洋環境保全」に貢献した米国のジョン・フレデリック・グラッスル博士(73歳)が選ばれました。

ウイルソン、フレシィエ両博士は故伊藤洋博士とともに1980年代初頭に新たな化学増幅レジストを使って半導体を製造する新技術を開発。レジストは、半導体製造のリソグラフィー工程に用いられる材料ですが、70年代には半導体リソグラフィーの微細化の限界が指摘されていました。3博士が開発した新たな化学増幅レジスト技術はこの限界を打ち破り、半導体の微細化、高集積化と生産工程の高速化に革新をもたらしました。1965年に発表された「半導体の集積密度は24ヶ月で倍増する」というムーアの法則通りの電子産業の発展を可能にした技術であると言っても過言ではありません。パソコンから携帯電話、家電製品、自動車、医療機器に至るまで生活に密着した幅広い製品の核となっている半導体のほとんどすべてが、この化学増幅レジストを用いた方法によって製造されています。また、次世代半導体技術である極端紫外線リソグラフィーや電子線リソグラフィーでも化学増幅レジストは重要な役割を果たしており、今後のエレクトロニクス産業を支える基盤技術になっています。

グラッスル博士は、深海のブラックスモーカー(熱水噴出孔)周辺での生態系発見の報告を受け、1979年に、自ら調査団を組織して潜水艇で水深2000メートルを超える深海に潜り、光の届かない深海で、光合成に依存しない化学合成生態系が存在することを解明し、生物が依存する主要なエネルギー源は太陽光であると考えられていた生物学の常識を覆しました。博士は、また、生物多様性の研究に取り組み、深海における生物多様性を支えるメカニズムとしてのパッチモザイク仮説を提唱し、深海現場調査で検証を行いました。この研究をきっかけとして、2000年に全海洋生物の多様性、分布、個体数を明らかにする10カ年プロジェクト「海洋生物センサス(CoML)」の立ち上げを主導。CoMLは2010年までに80カ国2,700名以上の研究者が参加するプロジェクトに発展しました。このプロジェクトの研究成果は海洋生物地理情報システム(OBIS)で公開され、海洋生物の保全施策の立案など世界中で利用されています。OBISはユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)で管理されています。

このように、ウイルソン、フレシィエ、グラッスルの3博士は各分野で独創的な研究成果をあげて科学技術の進歩に大きく貢献すると同時に、人類の平和と繁栄にも著しい貢献が認められ、2013年日本国際賞受賞者に選ばれました。授賞式は、4月24日(水)に東京で開催され、各氏に賞状と賞牌、また、各分野に対して賞金5,000万円が贈られます。

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