歴代受賞者

1998年(第14回)日本国際賞受賞者

農業生産のバイオテクノロジー分野
遺伝子組換え植物作出の理論と方法の確立

マックスプランク育種学研究所・
植物育種遺伝学研究部部長
1935 - 2003
ゲント大学教授 理学部遺伝学研究室主任
1933年生まれ
授賞理由

 シェル、ファン モンタギュー両博士は協力して、土壌細菌アグロバクテリウムの一種であるAgrobacterium tumefaciensによる双子葉植物でのクラウンゴール形成の分子機構を解析し、この腫瘍化がこの細菌のもつプラスミド(Tiプラスミド)中の特定のDNA領域(T-DNA)が宿主植物のゲノム中に組み込まれるために起こることを明らかにし、この系を利用して、外来遺伝子の植物ゲノムへの効率よい組み込み方法を確立した。すなわち、このTiプラスミドが腫瘍化を引き起こす要因であること、TiプラスミドのT-DNAと名づけた領域が宿主植物細胞に転入し、その細胞の核ゲノム中に組み込まれることを見いだし、このT-DNA上の植物ホルモンの合成にあずかる酵素の遺伝子群の作用によって腫瘍が形成されることを明らかにした。ついで、T-DNAの植物ゲノムへの組み込みの分子機構を研究し、植物ホルモン形成関連遺伝子などを除いたT-DNA断片でも植物ゲノムに組み込まれること、T-DNAの両端にある25塩基対の繰り返し配列が組み込みにとって極めて重要であることなど、その分子機構の詳細を明らかにした。そして、このT-DNAの宿主植物のゲノムへの組み込みを、遺伝子組換え植物の作出に応用するために、まず双子葉植物の傷害組織やプロトプラストにアグロバクテリウムを感染させる方法を確立した。ついで、TiプラスミドのT-DNA部分に外来遺伝子を挿入し、これをアグロバクテリウムに入れると、その感染によってこの外来遺伝子が宿主植物のゲノム中に組み込まれることを明らかにした。その後、両博士は独立に研究を進め、実際に、外来遺伝子の導入によって害虫抵抗性植物や除草剤抵抗性植物の試作に成功した。

 今日では、双子葉植物のみならず単子葉植物でもアグロバクテリウムによる遺伝子導入が可能となっており、両博士の業績は遺伝子組換え植物作出分野の発展の源となった。また、この遺伝子導入法は、両博士を含む多くの植物分子生物学者によって植物遺伝子の機能解析や発現調節機構の解析などの研究にも広範囲に利用されており、農業生産に直接的のみならず間接的にも大きな貢献を果たしてきた。

 

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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