歴代受賞者

1999年(第15回)日本国際賞受賞者

情報技術分野
高信頼デジタル通信・放送・記録のための符号理論の確立

ハワイ大学マノア校情報科学部教授
1924 - 2009
授賞理由

 ウェスレイ・ピーターソン博士は現在の情報技術に基本的な役割を果たしつつあるデジタル技術の分野において、その最も重要な要素である符号理論に関する先駆的研究を行い、極めて顕著な成果を挙げた。

 すなわち、同博士は、現在のデジタル通信、デジタル放送、デジタル記録の高信頼化にとって不可欠なものとなっている誤り訂正符号(誤り検出符号を含む)の基礎理論を確立するとともに、その実用化への道を拓く数々の提案・発明を行い、デジタル技術の進歩に決定的な影響を与えた。

 誤り訂正符号の基礎理論である代数的符号理論は、1961年に出版されたピーターソン博士の名著「誤り訂正符号」によって創始されたということができる。同博士は、この著書により、誤り訂正符号に関する用語や概念を確立し、現代代数学を基礎とする代数的符号理論の枠組みを構築するとともに、誤り訂正符号の符号化法や復号法、装置化法の体系を確立した。

 符号理論の研究者にとってバイブルともいわれるこの著書は、多くの国の言語に翻訳され、「代数的符号理論の創始者」としての同博士の名を不動のものとしている。電気工学、情報科学のカリキュラムに現代代数学が取り入れられることになったのも同博士の著書によるところが大きい。かつては、工学の分野でほとんど関心を持たれることの無かった現代代数学が、この著書により、誤り訂正符号の工学的応用に極めて有用であることが示され、現在で、符号理論、暗号理論、有限状態機械の理論などの基礎となっている。

 同書の内容はピーターソン博士の多くの独創的な研究成果を柱として構成されているが、その主要なものを挙げると次の通りである。現在のほとんど全てのデジタル通信システムやあらゆるコンピュータディスクには誤り検出のためにピーターソン博士の提案によって巡回冗長検査が用いられてきたが、さらに最近では、同博士が創始した代数概念を基礎とするさらに進歩した誤り検出・訂正システムに変わってきている。また、今日、コンパクトディスクの誤り訂正をはじめ広く実用に供されているリードソロモン符号はBCH符号と呼ばれる誤り訂正符号の一種であるが、同博士はBCH符号の実際的な復号法の最初の発明者でもある。さらに同博士は巡回符号の符号化や復号のための実用的なシフトレジスタ回路をも発明した。これらの発明は、誤り訂正符号の産業応用に 決定的な貢献をしている。

 このように、今日のデジタル通信、デジタル放送、デジタル記録にはピーターソン博士の研究成果が欠くべからざるものとして広く利用されており、その卓越した学術的ならびに技術的功績は日本国際賞の受賞者として誠にふさわしいものである。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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