歴代受賞者

2004年(第20回記念)日本国際賞受賞者

生態系の概念に基づく食料生産分野
大陸棚生態系の理解と持続的利用への貢献

 

オーストラリア連邦科学産業研究機関海洋研究部門 主任研究員
1951年生まれ
授賞理由

 K.J.セインズベリー博士は、オーストラリア北西部沖の多様性に富む大陸棚生態系の中で漁業対象魚種であり重要な位置を占める鍵種(key species)の生産力並びに魚類群集組成を決める上で海底生息環境が極めて重要であること、これら生物群集の変化に対し底曳きトロール漁業が潜在的インパクトを持つことを初めて明らかにし、あわせて漁業に実験的管理手法を初めて持ち込み、持続的利用を目指した研究を行い顕著な研究成果をあげた。

 博士の研究は、海底の生息域と魚類群集組成に対するトロール漁業のインパクトを最も科学的に示すものとして現在でもなお広く引用されており、広範な分野にわたって影響を及ぼしてきた。この研究成果は、オーストラリアでは北西大陸棚の底曳きトロール漁業の制限区域設定の基礎となり、アラフラ海におけるトロー ル漁業の無制限な開発を止めるのにも貢献した。

 セインズベリー博士は北西大陸棚生態系の利用に関する総合的な計画と管理を支えるための科学的基礎を持つ実用的方法の開発に向けた基幹研究("NWSイニシャティブ"と呼ばれる)を指導してきた。この研究では、対象となる沿岸及び大陸棚生息域を指定・図示した上で、各海域の動態と人間による利用のインパクトを予測するモデルや、海況、地域ごとの一次生産年変化、食物連鎖、種々の物質(例えば浮遊幼生、汚染物質、堆積物)の分散、汚染物質の取込みと蓄積、鍵種あるいは鍵種群の詳細な動態などに関する総合モデルを開発した。これらのモデルは、北西大陸棚域における種々の管理計画が生態系に及ぼす影響や社会経済面にもたらす効果の予測に利用されると共に、北西大陸棚生態系の人間による利用に適用されている現行のモニタリングと管理戦略の問題点の改善や、統合的な政策的枠組みの策定にも活用されている。

 さらに、セインズベリー博士は、問題の多いグレートバリアリーフの漁業管理に関してカナダのカール・ウォルターズ博士と協力して検討を行い、10年以上にわたって管理に関する科学的情報を提供し、延縄漁業の影響を明らかにするための施策を提案してきた。

 このように、セインズベリー博士は大陸棚生態系の底魚資源を中心とした個体群動態の解析と実験的管理などを含む基礎研究に基づいて、持続可能な漁業生産を目指す資源管理戦略の確立に極めて重要な役割を果たし、オーストラリアの海洋政策の策定にも大きく貢献してきた。また、博士の研究成果は、オーストラリア海域のみならず他の熱帯や温帯海域における水産資源の持続的利用につながるパラダイムの発展にも大きく貢献してきた。

 以上のように、セインズベリー博士は、純学問的見地からのみならず応用的見地からも、実際の漁業管理の改善に大きく貢献してきた水産科学分野における非常に優れたリーダーであり、同氏に本賞を授与することは真にふさわしいと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

page top