歴代受賞者

2007年(第23回)日本国際賞受賞者

基礎研究が発信する革新的デバイス分野
巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見と革新的スピンエレクトロニクス・デバイスの創生

パリ南大学(パリ第11)教授
1938年生まれ
ユーリヒ固体物理研究所
1939年生まれ
授賞理由

 1988年、アルベール・フェール博士とペーター・グリュンベルク博士は、時を同じくして独立に「巨大磁気抵抗効果(GMR) 」(わずかな磁界を加えるだけで電気抵抗が大きく変化する現象)を発見した。この発見は、両博士がそれぞれ長期にわたって取り組んできた基礎研究の成果で あり、その後のスピンエレクトロニクス分野の発展の礎になったものである。 
 強磁性体における磁化の状態が電気抵抗に与える影響については古くから関心がもたれてきたが、フェール博士は、1970年代以来、強磁性合金における電 気伝導現象の量子力学に基づくミクロな理解に向けて広汎かつ先駆的な研究に取り組んできた。このような研究を通して1980年代半ばには、人工磁性格子に おいて磁性層の磁化を外部磁界によって反平行から平行にスイッチすることが出来ればGMRが可能であろうとの先見ができるようになった。

 このような状況下、長年磁性膜の成長方法の改善と評価法の確立に取り組んできたグリュンベルク博士は、1986年には鉄・クロム・鉄の薄い膜を三層積ん だ構造において、クロム層の厚みがある特定の値を取るときに鉄の層の磁化が反平行に結合することを見出した。そして1988年には、このような三層の系が 室温で1%程度のGMRを示すことを発見した。これとは独立にフェール博士らは、全く同時期に、鉄とクロムを数十層重ねた多層膜において低温(4.2K) かつ1T程度の磁場により電気抵抗が50%程度も変化するというきわめて大きなGMRを発見した。これら両博士の発見により室温でのGMRの応用の可能性 について広く社会的に認識されるようになった。

  GMRの発見から10年ほどの短期間のうちに、この効果を用いた小型大容量ハードディスクがパソコン、ビデオレコーダ、携帯音楽プレーヤー等のIT機器に 組み込まれ普及したことは注目に値する。両博士が拓いたスピンエレクトロニクスのパラダイムは、電気伝導現象と磁気現象を結びつける多くの基礎研究とこの 効果を用いた不揮発性メモリ(MRAM)などの革新的な応用分野の発展を促した。以上のように、アルベール・フェール博士およびペーター・グリュンベルク 博士の業績は、革新的デバイスに結びつく基礎研究として、2007年日本国際賞を授賞するにふさわしいものである。

 

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

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