歴代受賞者

2009年(第25回)日本国際賞受賞者

『医学・工学の融合における疾患への技術の展開』分野
核医学における断層イメージングに対する貢献

 

ミシガン大学医学部放射線医学教授
1929年生まれ
授賞理由

 デビット・クール博士は、1950年代後半に放射性同位元素の体内分布を断層撮影する開発実験を世界に先駆けて行った。博士の率いるペンシルバニア大学のグループは、単光子放出断層撮影装置である SPECT(single photon emission computed tomography)シリーズのマークⅡ(1964年)、Ⅲ(1970年)、Ⅳ(1976年)を開発するとともに、数値計算による断層画像再構成の医学応用を推進し、生体における体軸横断断層撮影を世界で初めて可能にした。さらにイメージングの画質を向上させ、脳腫瘍や脳卒中などにおける断層画像の臨床的有効性を立証した。クール博士は、1960年代半ばにはヒトの体軸横断断層イメージングに成功しているが、これはハンスフィールド博士のX線CT開発よりもかなり早い時期であり、その技術は、陽電子放出断層撮影である PET(positron emission tomography)などを含めた種々のコンピューター断層法の開発、発展にきわめて大きなインパクトを与えた。

 1970年代の初頭、博士は自らの開発した放射性同位元素による脳の再構成断層画像を用いて、局所脳血液量の測定を行っている。これは生体の生理機能を3次元的に測定した最初の成果であり、脳循環病態生理学できわめて重要な局所脳血流代謝の定量的評価から脳生理学、神経科学、行動科学などの核医学的研究への道を開くこととなった。

 ほぼ同じ時期、米国立精神衛生研究所のソコロフ博士は動物脳における局所脳代謝機能の評価にオートラジオグラフによるβ線放出核種14C-デオキシグルコースのイメージングが有効であることを発見した。これを臨床に用いるために、クール博士のグループは、ソコロフ博士、ブルックヘイヴン国立研究所のウォルフ博士らとの共同研究を行い、ヒトに使用できる陽電子放出核種として18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)が最適であるとの結論を得た。そして1976年8月16日、ブルックヘイヴン国立研究所で合成されたFDGはペンシルバニア大学に運ばれ、SPECT(マークⅣ)を用いて初めてヒト脳の代謝イメージングに成功した。その後FDGはPET用の核種として脳、心臓、腫瘍などのイメージングに世界各国で幅広く使用され、PETの普及の牽引役となった。

 現在、PET/SPECTは臨床において不可欠なものとなっており、さらにX線CTやMRIとの画像融合によって統合的画像情報としての有用性が増している。様々な分子プローブの開発とその核医学画像は分子イメージングとして、各分野で基礎的、臨床的研究開発が活発に進められており、将来一層の発展が期待される。

 核医学断層画像の開発に貢献し、核医学的断層画像の父とも称されるクール博士は「医学・工学の融合における疾患への技術の展開」への貢献を称える2009年日本国際賞に最もふさわしいと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

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