歴代受賞者

2010年(第26回)日本国際賞受賞者

「生物生産・生命環境」分野
窒素などの物質循環解析に基づく地球環境問題解決への貢献

 

スタンフォード大学生物学部教授
1949年生まれ

授賞理由

 ヴィトーセク博士は、生態系における窒素などの栄養素循環量解析を基として、人間活動が生態系に与える影響の解明に先駆的な業績をあげてきた。

 博士は1970年代及び80年代、共同研究者とともに、森林の伐採や他の人為的影響と窒素や他の元素の森林生態系からの喪失との関連について研究を行った。この研究を起点として、博士は人間活動による窒素供給が地球生態系へ及ぼす影響の解析を幅広く展開した。

 19世紀以前は、窒素は主として窒素固定菌などによって大気中から生態系に取り込まれていたが、1990年頃からこれと同等量以上の大量の窒素が施肥、化石燃料の消費の結果、人為的に生態系に加えられるようになった。博士とその共同研究者は、この窒素供給量の大幅な増加が、炭素やリン及び他の栄養素の循環にも大きく影響を与えていることを明らかにした。また、博士は人間活動により増大した過剰窒素が河川や沿岸海域の汚染、土壌や地下水の酸性化、生物多様性の減少など生態環境に広く悪影響を及ぼしてきたことを指摘してきた。これらの研究を通じて、博士は生物地球化学と呼ばれる新たな研究領域の手法や概念の確立に大きく貢献した。

 さらに博士は、自らの研究成果に、80年代頃から盛んになった生物地球化学分野のデータを加え、人間活動が地球環境全体に及ぼす影響、つまり土地利用形態、運輸手段の変化さらには生物学的侵入者の優先化の影響について追究した。その結果、博士と共同研究者は、陸上生態系の光合成生産量の30-40%が人間活動に直接・間接に利用されていることなどを明らかにし、地球生態系の様々な事象が大きく人間活動の影響を受けていることを報告した。こうした研究結果に基づき、博士は地球生態系に及ぼす人間活動の重大性について警鐘を鳴らすと同時に環境問題に関連する政策決定に対しても重要な示唆を与えてきた。

 生物地球化学と呼ばれる研究領域を発展させ、喫緊の課題となっている地球環境問題解決への方策を科学的に探究し、優れた業績を挙げているヴィトーセク博士は、「生物生産・生命環境」への貢献を称える2010年日本国際賞にふさわしいと考える。

【業績解説文】

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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