歴代受賞者

2016年(第32回)Japan Prize受賞者

「物質、材料、生産」分野
ナノ構造を活用した画期的な無機電子機能物質・材料の創製

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 教授
同大学 元素戦略研究センター長
1953年生まれ
授賞理由

 細野秀雄博士は、物質のナノ構造を活用することによって、ありふれた元素を使いながら、元素や化合物の固定概念を覆す数々の無機電子機能物質・材料を創製し、基礎科学と産業の発展に大きく貢献してきた。

 透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)は、博士がその優れた特性を見出し、材料研究とデバイス開発を先導し、近年大きな産業利用へとつながった顕著な実例である。博士は、イオン性の強いTAOSの電子移動度がこれまで使われてきた共有結合性のアモルファス半導体より1桁大きいこと、そしてその理由が伝導を担う金属原子軌道の大きな広がりにあることを見出し、それを設計指針として数多くのアモルファス半導体物質を開発した。細野博士の研究が嚆矢となってTAOSは半導体研究の一大分野となり、中でも博士が世界で初めて作製したIn-Ga-Zn-O系薄膜トランジスタは、移動度が大きく、透明性が高く、リーク電流の小さい優れた省エネルギーデバイスとして実用化され、PC モニター、タブレットPCなどの液晶ディスプレイでアモルファスシリコンを置き換えつつあり、大型の有機EL-TVにも実装が開始されている。

 また博士は、磁性元素であるため超伝導には有害と考えられてきた鉄を含む、鉄系オキシニクタイド化合物(LaFeAsOなど)が、高い臨界温度で超伝導となることを発見し、超伝導物質探索の新たな領域を切り開いた。また、酸化物イオンをヒドリドで置換することで、従前よりも広い範囲でキャリア量の制御を可能にした。これによって新たな超伝導領域を発見するなど、超伝導機構の基礎研究にも大きく貢献した。鉄系超伝導体は臨界磁場が高く、結晶粒界の性質が優れていることから、強い磁場下で使われる超伝導線材などに用いる実用材料として応用研究が進められている。

 さらに、ありふれたアルミナセメントの構成成分である12CaO・7Al2O3(C12A7)のかご状骨格構造内部の酸化物イオンを電子で置換することにより、陽イオン骨格とアニオン電子からなるエレクトライドを創製した。このC12A7エレクトライドは大気中でも安定な初めてのエレクトライドであり、電気伝導性が高く 仕事関数がアルカリ金属なみに小さいという、セメントの概念を変える新物質である。博士の研究は、その特異な電子物性を生かした常圧下でのアンモニア合成触媒反応の実証や二次元エレクトライドの発見など、実用化も視野に入れつつ大きな広がりを見せている。

 このように細野秀雄博士は、常識を破る無機電子機能物質・材料の創製によって材料科学の新しい領域を開拓し、基礎科学の広範な分野で学術的興奮を喚起しつつ、産業に大きく貢献してきた。これらは、まさに「物質、材料、生産」分野への貢献を称える2016年日本国際賞にふさわしい業績である。

【業績解説文】

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