歴代受賞者

2018年(第34回)Japan Prize受賞者

「資源・エネルギー、環境、社会基盤」分野
リチウムイオン電池の開発

旭化成株式会社 名誉フェロー
名城大学教授
1948年生まれ
授賞理由

 吉野彰博士は、リチウムイオン電池の開発において大きな貢献を果たした。博士の最大の貢献は、正極におけるアルミ箔集電材、およびポリエチレン系セパレータといった要素技術の開発、さらにそれらと既存のLiCoO2正極材料やカーボン系負極材料を組み合わせることで、3.9V以上の起電力を有する実応用可能なリチウムイオン電池を実現した点にある。

 リチウムイオン電池に関しては、1979年にオックスフォード大学で開発された水島公一博士とジョン・B・グッドイナフ博士の LiCoO2正極、1980年、1981年にそれぞれ特許出願がなされたペンシルベニア大学のマクダイアミッド教授らによるポリアセチレン負極や1981年の三洋電機 池田宏之助博士の黒鉛負極の開発など、様々な要素技術開発が進められていた。しかし、当時、有望な正極材料として考えられていた金属カルコゲナイト化合物等とカーボン負極の組み合わせや、LiCoO2正極と金属Li負極の組み合わせでは、起電力が小さい等の理由により実用化に繋がるほどの性能は見出されていなかった。吉野博士は独自の要素技術開発と既存技術を組み合わせることで、リチウムイオン電池をシステムとして成立させたが、この発明はリチウムイオン電池における基本特許の一つとなっている。博士の発案者、技術開発者としての貢献は極めて大きい。

 90年代初めから始まったデジタル化やIT革命、携帯電話等のモバイル革命は、小型、軽量、大容量、長寿命のリチウムイオン電池なしには構築できなかった。モバイル端末は現在、先進国のみならず開発途上国においても、広く社会基盤として欠かせない要素となっている。また近年では、リチウムイオン電池はハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車にも搭載され、輸送時の環境影響物質の排出低減に貢献している。加えて、地球温暖化対策としての自然エネルギーの供給不安定性を解決する手段として、カスケード利用を含めたリチウムイオン電池の活用が期待されるなど社会における重要性がますます増加しており、本技術を再評価する時期に来たと考える。その中で博士が達成した成果は、現在のリチウムイオン電池の技術・産業面での礎となっており、特筆すべきものである。

 以上、リチウムイオン電池の開発において独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、社会実装に繋げた吉野彰博士の功績は極めて大きく、「資源・エネルギー、環境、社会基盤」分野における貢献を称える2018年日本国際賞にふさわしいと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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