受賞者

2018年(第34回)Japan Prize受賞者

「医学、薬学」分野
Bリンパ球・Tリンパ球系列の発見とそれがもたらした疾患の病態解明と治療法開発

エモリー大学医学部教授
1933年生まれ
ウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所
名誉教授
1931年生まれ
授賞理由

 免疫システムは、病原体侵入や腫瘍発生から生体を防御するという重要な役割を担っており、精密な調節機構の下で生体の恒常性維持に貢献している。実際、その調節機構の破綻は重篤感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患、慢性炎症性疾患、悪性腫瘍などの難病を引き起こす。近年、このような免疫関連疾患の病態解明が進み、免疫細胞自体、あるいはその産物を標的とした治療薬の開発が盛んに行われるようになった。その原動力となったのが、マックス・クーパー博士とジャック・ミラー博士による適応免疫系における2 種類のリンパ球系列、すなわち液性免疫(抗体産生)を担うBリンパ球系列と細胞性免疫を担うTリンパ球系列の発見である。

 ミラー博士は、それまで機能不明の臓器とされていた胸腺を生後すぐに摘出した動物では、本来拒絶されるべき異種動物からの皮膚移植片が生着する一方で、種々の感染症に罹りやすくなることを見いだし、胸腺が細胞性免疫に必須の臓器であることを明らかにした。また、彼は後になってマウスのリンパ球が発生的にも機能的にも異なった二つの系列、すなわちBリンパ球系列、Tリンパ球系列、に分けられることを明らかにした。一方、クーパー博士は小児科医として免疫不全症患者における臨床症状の違いに注目し、適応免疫細胞の中に機能的に異なる細胞系列が存在することを予見した。検証モデルとしてニワトリを用い、孵化直後にファブリシウス嚢を摘出すると、液性免疫の特徴である抗体産生能が欠損し、一方で胸腺を摘出すると細胞性免疫の特徴である遅延型過敏症、移植片対宿主反応及び皮膚移植拒絶能が消失することを見いだし、液性免疫を担うB リンパ球系列と細胞性免疫を担うT リンパ球系列の存在を実証した。クーパー博士はさらに、この「2 種類のリンパ球系列を駆使して免疫システムを制御する」という仕組みが、形を変えながらもヒトから無顎脊椎動物に至るまで進化的に広く保存されており、生体制御システムとして普遍的に重要であることを見いだした。

 このような両博士の研究により、現代免疫学の礎となる基本コンセプトが構築され、それに基づいた基礎・応用開発研究が急速に発展し、社会的、経済的にも大きな波及効果をもたらしている。事実、医学、薬学分野で最近脚光を浴びている癌の新規治療薬(免疫チェックポイント阻害抗体、ならびに遺伝子改変Tリンパ球)や関節リウマチ、炎症性腸炎などに対する抗サイトカイン抗体治療薬は、いずれも免疫学の脈々たる基盤研究、橋渡し研究から生まれた成果であり、両博士の先駆的な発見があったからこそ成し得たものである。以上から、マックス・クーパー博士とジャック・ミラー博士の功績は「医学、薬学」分野における貢献を称える 2018 年日本国際賞にふさわしいと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

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Japan Prize 30年の歩み

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