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プレスリリース

2019年4月8日

2019年(第35回)Japan Prize授賞式
天皇皇后両陛下をお迎えして開催  日本と米国の2博士が受賞
「物質・材料、生産」分野 岡本佳男博士 / 「生物生産、生態・環境」分野 ラタン・ラル博士
若手科学者支援のための新制度「日本国際賞 平成記念研究助成」の発表も

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岡本 佳男 博士
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ラタン・ラル 博士

公益財団法人国際科学技術財団(理事長:小宮山宏)は、世界の科学技術分野で独創的な成果を挙げ、人類の平和と繁栄に著しく貢献した科学者に贈るJapan Prize(日本国際賞)の授賞式を4月8日(月)、天皇皇后両陛下のご臨席のもと、東京都千代田区の国立劇場で開催しました。

2019年(第35回)のJapan Prizeは「物質・材料、生産」分野で、名古屋大学特別教授の岡本佳男博士が「らせん高分子の精密合成と医薬品等の実用的光学分割材料の開発への先駆的貢献」の業績で、「生物生産、生態・環境」分野では、オハイオ州立大学特別栄誉教授のラタン・ラル博士が「食糧安全保障強化と気候変動緩和のための持続的土壌管理手法の確立」の業績で受賞し、賞状と賞牌に加え各分野につき賞金5,000万円が贈られました。

Japan Prize受賞者は毎年、国内外の約15,000人の有識者の推薦を受け、約1年間に及ぶ厳正な審査を経て決定されます。2019年は「物質・材料、生産」分野で270件、「生物生産、生態・環境」分野で99件の推薦を受け、その中から両博士が選ばれました。

式典には、天皇皇后両陛下ご臨席のもと三権の長、関係閣僚の皆様をはじめ、各界トップの方々など、約1,000名が出席。両博士の挨拶や、衆議院議長 大島理森氏からの祝辞に続き、岡本博士のご子息の岡本一将氏には記念のコサージュ、ラル博士のご令室スゥクヴァルシャ・ラル氏には花束が贈られました。また、式典の後には記念演奏会が催され、両博士のリクエスト曲が東京藝術大学シンフォニー・オーケストラによって演奏されました。

さらに、国際科学技術財団 小宮山宏理事長より、新たな研究助成制度である「日本国際賞 平成記念研究助成」を本年より開始すると発表しました。これは、現行の若手科学者支援の研究助成を大幅に改編、強化したものであり、この制度名については、35年間を通じて若手科学者への支援に賛同され、激励いただいた両陛下の御心にちなんで命名されております。天皇陛下が日本国際賞に示していただいたご厚意への深い感謝の意を、永く形に残したいという願いが込められています。

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岡本 佳男 博士

1941年1月10日 (78歳 日本)
名古屋大学 特別教授/中国ハルビン工程大学 特聘教授

<授賞対象分野>
「物質・材料、生産」分野

<授賞業績>
らせん高分子の精密合成と医薬品等の実用的光学分割材料の開発への先駆的貢献

<研究概要>
化学組成が同じ分子どうしで、鏡に映した像が左手と右手のように重ね合わせることのできない立体構造をもつものがあります。このような場合、両者は鏡像異性体の関係にあるといいます。鏡像異性体どうしは融点・沸点などの物理的性質は同じですが、人体に対する生理作用が異なる場合があり、医薬品製造などでは大きな問題になり得ます。ところが、通常の化学合成で生成するのは鏡像異性体の混合物です。そこで、触媒を利用して片方だけを合成する技術が進む一方、生成した混合物を分ける利便性の高い分離法が広く使われるようになりました。それを実現させたのがらせん高分子です。一方向巻きのらせん高分子をシリカゲルに吸着させてカラムに充填し、これに混合物を注入すると、らせん高分子に捕捉されやすい一方の鏡像異性体はカラム内に長時間留まり、捕捉されにくいほうは先に流出します。岡本佳男博士は、一方巻きらせん高分子の合成に世界ではじめて成功し、さらにこれが鏡像異性体の分離に活用できることを示しました。実用化した製品は、医薬品・香料・機能性材料などの研究開発や製造に、世界中で広く使われています。高分子合成の基礎から実用に至る岡本博士の業績は、国際的に高く評価されるところです。

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ラタン・ラル 博士 

1944年9月5日 (74歳 アメリカ合衆国)
オハイオ州立大学 特別栄誉教授/炭素管理・隔離センター センター長

<授賞対象分野>
「生物生産、生態・環境」分野

<授賞業績>
食糧安全保障強化と気候変動緩和のための持続的土壌管理手法の確立

<研究概要>
土壌は、食糧生産だけでなく、炭素隔離、環境浄化、物質循環、生物多様性の維持など環境保全にも重要で幅広い機能をもっています。ラル博士は、アフリカのサブサハラ地域で、「不耕起栽培法」によって、土壌侵食を防ぐとともに、生物生産を安定化できることを実証し、その普及に努めました。通常の農業では土壌を耕すのに対し、土壌を耕さないことを基本とする不耕起栽培法は、ラル博士が土壌有機物の流出メカニズムに着目することで確立したものです。この成果を踏まえて、ラル博士は土壌と地球環境問題の関係の研究に歩を進めました。地球規模の炭素循環を解析した結果、土壌を適切に管理すれば、土壌が炭素を隔離し、大気中のCO2を減少させるだけでなく、土壌が肥沃になり食糧生産も向上することを見いだしました。そして、ラル博士は、適切な土壌管理の重要性を国際社会に訴え続けた結果、その理念は、「フォーパーミル・イニシアチブ」という土壌保全の国際的な取り組みとして政策化され、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の推進とも密接に関わっています。

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