2019年

「物質・材料、生産」分野から10件、「生物生産、生態・環境」分野から10件、「クリーン&サステイナブルエネルギー」分野から3件、計23件の募集を行い、選考委員会による厳正なる選考の結果、次の若手研究者23名の研究テーマが採択されました。

研究助成一覧

「物質・材料、生産」分野(10名)

金属クラスターを擬光合成色素として利用する新規人工光合成モデルの提案

北海道大学 大学院工学研究院 材料科学部門 助教
石田 洋平

助成額 100万円

植物の光合成系はクロロフィルの規則配列により高効率な太陽光捕集を達成し、光合成反応を実現している。本研究では、金属を分子として用いた全く新しい人工光合成モデルを提案する。近年、金属原子数十個からなる金属クラスターが、有機分子のような光学特性を示すことが明らかになってきた。秩序立った集合構造を構築することで金属クラスターの分子としての性能を最大限に引き出し、全く新しい人工光合成モデルを提案する。

“表裏を有する「二面性ポリマー」の開発”

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教
石割 文崇

助成額 100万円

 

本研究では、高分子鎖を従来のようにひも状の物質としてではなく、「異なる二面を持つテープ状の物質」として捉え、A面・B面というような表裏を有する「二面性ポリマー」を開発する。この二面性ポリマーの並列型ブロックコポリマーやナノスコッチテープとしての自己集合化挙動や、表面や界面での挙動について調べ、これらの特性を活かした新材料としての応用可能性を探索する。

金属カルシウムの高効率製造法の開発

東京大学 生産技術研究所 助教
大内 隆成

助成額 100万円

金属カルシウムは、希土類金属(レアアース)やチタンなどレアメタルの製錬・精錬プロセス、およびリサイクルプロセスにおいて重要な役割を果たしている。本研究では「高純度金属カルシウムの高効率・低環境負荷・低コスト製造」を可能とする技術革新を目指す。安価な金属カルシウムを利用できるようになると、レアメタルの製造・リサイクルコストを抑えることができるようになり、持続性と科学技術の発展が両立した社会の構築に大きく貢献すると考えている。

金属酸化物デバイスの極微細印刷による次世代省エネルギー製造技術の開発

産業技術総合研究所 センシングシステム研究センター 主任研究員
日下 靖之

助成額 100万円

金属酸化物前駆体を「半乾燥化」させるための材料処方技術を開発し、従来の「液膜の濡れ」から「準固体化膜の破断・付着転写」へとパラダイムを転換した新規印刷プロセスと組み合わせることで、高集積酸化物デバイスを試作する。さらに、印刷を可能にする準固体化薄膜の力学特性や、ステップカバレッジを保証する積層プロセスルールを解明することで、普遍的なデバイス製造技術へと発展させることを目指す。

ペプチド医薬を志向した非天然アミノ酸の迅速合成法の開発

北海道大学 大学院理学研究院 化学部門 講師
清水 洋平

助成額 100万円

タンパク質と原料を同一にするペプチドは、タンパク質と相互作用することによってタンパク質の機能を調節できるため、医薬品としての利用が注目されている。しかし、汎用される20種類のアミノ酸のみを原料としたペプチドでは医薬としての有効性に限界があり、非天然のアミノ酸を供給する新たな方法が待たれている。そこで本研究では、カルボン酸と呼ばれる入手容易な化合物群を原料として、簡便に非天然アミノ酸を合成する方法の開発を目指す。

バイオマスセルロースナノ構造体を活用する高耐久超撥水性材料の開発

東北大学 多元物質科学研究所 助教
朱 慧娥

助成額 100万円

超撥水性材料は、水接触角(WCA)が150oを超える表面を作り出すことのできる材料である。印刷、自動車、電気など広範な分野で関心がもたれ応用されている。人工的な超撥水性材料は低表面エネルギーの機能団の導入(化学因子)と表面の微細な凹凸構造(物理因子)によって支配されている。本研究では、階層構造を有するセルロースナノ構造体(物理因子)を利用し、表面化学修飾(化学因子)により高耐久超撥水性材料を目指す。
次世代超高強度構造材料としてのハイエントロピー合金の組織制御と力学的特性

国立高等専門学校機構 新居浜工業高等専門学校 准教授
當代 光陽

助成額 100万円

近年世界的に注目を集めているハイエントロピー合金(HEA,多成分系からなる固溶体合金)について熱処理と熱力学計算によって平衡相の体積率、微細組織ならびに結晶配向化制御を行い、生体用途や高温構造材料として良好な力学特性を示すbcc型新規高強度ハイエントロピー合金の開発とその材料設計法の確立を目指す。

有機半導体 ― 無機酸化物界面の修飾による新奇な電子機能性の開拓

金沢大学 理工研究域 物質化学系 助教 
中野 正浩

助成額 100万円

次世代のエレクトロニクス技術として有機半導体が盛んに研究されている。 これまでは有機デバイスの性能向上のために、有機分子の固体中での配向やエネルギーレベルなど“バルク中の物性”についての研究が主に行われてきた。一方、本研究では有機デバイス中の“界面“に注目する。デバイス中の有機分子と無機酸化物の界面を種々の自己組織化単分子膜により修飾し、デザインした機能の発現を雛形のデバイスを用いて調査する。

化学修飾グラフェン導入による高熱伝導性ナイロン樹脂の開発

中部大学 工学部 応用化学科 講師
守谷(森棟)せいら

助成額 100万円

本研究は,in-situ重合によりナイロン66(Ny66)中にて化学修飾グラフェン(MG)をナノ次元で分散させると同時に強い界面相互作用を発現させ,わずかな充てん率でグラフェン由来の高熱伝導性をはじめとする優れた物性を付与する。MGの化学修飾鎖構造とNy66/MGナノ複合材料の構造・物性との関係を明らかにし,最適化をはかる。本研究により,電気自動車・燃料電池自動車をはじめ次世代を担う機器を支えるナイロン樹脂を開発する。
自律駆動型IoTデバイスの実現に向けた「塗って発電する」有機熱電変換シートの開発

東京大学 大学院新領域創成科学研究科 特任准教授
渡邉 峻一郎

助成額 100万円

本研究では、我々が開発した印刷プロセス可能な導電性高分子の基盤技術を元に、未利用の排熱を利用した熱電変換エネルギーハーベスティング技術を融合し、「塗るだけで半永久的に発電」する夢のデバイスを実現する。有機熱電変換シートを開発するとともに、低消費電力論理演算回路および高感度センサー素子を組み合わせることで、電源供給不要なIoTデバイスを世界に先駆けて実現する。

(所属、役職は助成当時のもの、五十音順)

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「生物生産、生態・環境」分野(10名)

温暖化に伴う海洋貧酸素化の長期変動と、底生生物への影響:ジュラ紀前期の地層記録からの知見

千葉大学 教育学部 特任助教
泉 賢太郎

助成額 100万円

温暖化に伴う海洋貧酸素化の生物への影響を長期予測するためには、過去の事例の解明が必須である。ジュラ紀前期には大気CO2濃度が1200 ppm(2100年の最大見積値と同程度)まで上昇したことから、モデル事例として最適である。しかし、当時の温暖化の研究はローカルな海域で堆積した地層に基づくものが多く、当時最大の海域からのデータは乏しい。本研究により、ジュラ紀前期の貧酸素化と底生生物への影響に関するグローバルな知見を得る。

豚増殖性腸炎の簡易診断法確立に向けた原因細菌Lawsonia intracellularisの病原性に関わる遺伝子領域の同定

岐阜大学 応用生物科学部  助教
岡田 彩加

助成額 100万円

Lawsonia intracellularis(Li)は細菌の一種であり、ブタが感染すると増体率が低下や、腸管がゴムホースのように硬くなり可食部位が廃棄されることによる経済被害が起こる。農場では下痢の症状しか示さないため、出荷前にLiによるものだと診断することは難しい。また、Liの中には下痢を起こさないものも存在し、Liの検出だけで、Liによる下痢だと断定することはできない。
そこで、本研究では下痢を起こすLiだけを検出することのできる簡易診断法の確立を目指して、下痢を起こすLiに特徴的な遺伝子領域を同定することを目標としている。Liの簡易診断法を確立することができれば、被害が起きる前にLiに効果的な抗生物質を用いて、Liによる下痢を制御することが可能になる。Liの農場内での制御が可能になれば、Liによる下痢による増体率の低下、腸管がゴムホース状になることによる廃棄などの経済被害を減少させ、豚肉の生産効率向上に大きく寄与すると考えられる。

「生態系の状況依存性」を克服する新たな生態系サービス管理手法の提案

東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教
曽我 昌史

助成額 100万円

本研究では、広域スケールの環境・生態データを用い、生態系の「状況依存性」を克服する新たな生態系サービスの管理手法を提案する。具体的には、生態系サービスと土地利用の間に生じる地域依存性を国土スケールで予測し、どの地域でどのような土地利用を行うことが、生態系サービスを発揮させるうえで最適なのかを図示化することを目指す。

都市化に対するショウジョウバエ類の迅速な適応進化の検証

千葉大学 大学院理学研究院 生物学研究部門 特任助教
高橋 佑磨

助成額 100万円

近年、地球上の都市の面積は増加の一途をたどり、都市化による気温上昇(温害)や光環境の変化(光害)は、生物に多大なる影響を与えている。本研究では、都市に生息するショウジョウバエを用いて都市において生じた進化的な変化を検出することで、都市化という極めて急速に生じた環境変動が生物に与える影響を明らかにする。

キヌアと他種アカザ属遺伝資源の栄養成分とストレス耐性の包括的特徴づけ

東京大学 アジア生物資源環境研究センター 准教授
津釜 大侑

助成額 100万円

キヌアは栄養価が高く耐塩性も持つことから、農作物としても研究対象としても近年注目されている。一方、キヌアに近縁なアカザ属植物にも高い栄養価や耐塩性等を持つものが含まれることが示唆されているが、それらの栄養成分、成育特性、遺伝的背景を包括的に比較した例は無い。本研究においては、これらに関する解析を行う。これにより、食糧生産や土壌浄化に対する各種アカザ属植物の利用可能性に関して知見を得ることを目指す。

環境保全型農法における植食性昆虫の意義の検討: ゆるやかな虫害は作物の品質を高めるか?

信州大学 大学院総合理工学研究科 助教
角田 智詞

助成額 100万円

農地の生物多様性を保全すると、作物への虫害は、ある程度は避けられない。しかし、作物は自己防御機能を持っており、ゆるやかな虫害は作物の化学防御物質濃度を高める。化学防御物質は人間にとって機能性成分として働くため、ゆるやかな虫害が作物の品質を高めうる。そこで、環境保全型管理と慣行管理でトマトを栽培し、農地の生物がトマトの収量と品質に与える影響を定量する。

海産甲殻類の幼生変態の分子基盤の解明

神奈川大学 理学部生物科学科 日本学術振興会特別研究員PD
豊田 賢治

助成額 100万円

国内の水産業で重要な生物資源である海産甲殻類(エビ・カニ類)は、発生初期では浮遊性プランクトンであり、数回の変態を経て底生性となる。この海産甲殻類の幼生変態の分子基盤の大部分は謎に包まれている。そこで本研究では、水産価値の高いクルマエビとワタリガニを実験モデルに、幼生期の各ステージの時系列トランスクリプトーム解析によって幼生変態を司る遺伝子制御ネットワークの解明を目指す。
サブサハラアフリカでの食糧問題の解決に資する簡易水田土壌肥沃度評価法の開発

国際農林水産業研究センター 生産環境・畜産領域 特別研究員
西垣 智弘

助成額 100万円

飢餓に苦しむサブサハラアフリカの食糧問題を解決するためには、イネの増産が喫緊の課題であり、そのためには土壌肥沃度に応じた適切な栽培品種や肥培管理法の導入が不可欠である。しかし、従来の土壌肥沃度診断法は、特殊な分析機器を必要とし、時間とコストがかかるため、土壌肥沃度のムラが大きく多点数の分析を必要とする当地域への適用性に課題があった。そこで本研究では、現地の農業普及員らが容易に実施可能で、かつ迅速に多点数測定できる指標を複数組み合わせることで簡易土壌肥沃度評価法の確立を目指す。

光エネルギー駆動型の生体触媒反応系の構築

奈良女子大学 研究院自然科学系化学領域 助教
本田 裕樹

助成額 100万円

本研究の目的は、人類にとって無尽蔵と捉えることができる太陽光エネルギーを用いた光水素生産系の構築である。特に、高効率な水素生成触媒である酵素[FeFe]-ヒドロゲナーゼのような生体触媒の機能を巧みに活用した新規な触媒反応系、具体的には、光-化学エネルギー変換能と水素生産能を同時に付与した組換え大腸菌細胞を触媒とする新たな光バイオ水素生産系の構築を目指す。

環境と生物的ストレスの相互作用に着目したイネのマルチストレス耐性に関与する生理機能の解明

岩手大学 農学部 植物生命科学科 助教
松波 麻耶

助成額 100万円

作物が栽培される野外環境では、様々な環境ストレスや病虫害などの生物的ストレスが複合的に起こる。本研究では、イネにおける環境ストレス応答と生物的ストレス応答の相互作用が最重要病害であるイネいもち病の抵抗性に及ぼす影響やその品種間差異を明らかにするとともに、マルチストレス環境への生理応答を分子レベルで調査し、気候変動にも病気にも強いイネが持つべき特性やそのしくみについて追究する。

(所属、役職は助成当時のもの、五十音順)

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「クリーン&サステイナブルエネルギー」分野(3名)

再生可能エネルギーによる水電解未利用純酸素を活用した密閉型純酸素燃焼システム評価

岐阜大学 工学部 機械工学科 助教
朝原 誠

助成額 100万円

Power to Gasによって再生可能エネルギーから生成された純酸素を熱利用するセクターカップリングシステムを提案する。本提案システムでは、水素/メタン(天然ガス)混合燃料の密閉型純酸素燃焼により、NOxおよびCO2を排出せずに、再生可能エネルギーを熱エネルギーに変換することを目指す。

ディスポーザー処理槽汚泥からの効率的なエネルギー回収システムの設計

北九州市立大学 環境技術研究所 講師
藤山 淳史

助成額 100万円

大都市を中心に導入されているディスポーザー排水処理システムは都市における生ごみ処理の一翼を担っているが、そこから発生する汚泥は脱水焼却処理されている事例が多く、有効活用されていないのが現状である。本研究では、ディスポーザー排水処理システム由来の汚泥を処理槽から回収し、分析・実験を行うことによって基礎的なデータを得るとともに、バイオガス化によって効率的にエネルギーを回収するためのシステムを設計し、その有効性を評価する。

新型カリウムイオン電池の高性能化に向けた新規高電圧電極材料の開発

産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 電池技術研究部門 研究員
マセセ タイタス

助成額 100万円

資源面での優位性のみならず、リチウムイオン電池に比類する高電圧電池系が実現可能な利点から、次世代大型蓄電池の現実解としてカリウムイオン電池が有望視される。しかしながら、カリウムイオン電池に適した高電圧正極材料が課題となっており、本研究では大量の実験と計算化学を併用し、新規電極材料の探索・合成により高電圧系カリウムイオン電池の開発に資する。

 

 

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研究助成

Japan Prize 30年の歩み

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