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2022年1月25日

2022 Japan Prize受賞者決定

「物質・材料、生産」分野
photoカタリン・カリコー博士 photoドリュー・ワイスマン博士
「生物生産、生態・環境」分野
photoクリストファー・フィールド博士

公益財団法人国際科学技術財団(理事長 小宮山宏)は、本日2022年1月25日(火)、2022年Japan Prizeの受賞者を発表しました。本年の対象2分野について、「物質・材料、生産」分野はカタリン・カリコー博士(ハンガリーと米国)とドリュー・ワイスマン博士(米国)が共同で、「生物生産、生態・環境」分野はクリストファー・フィールド博士(米国)が単独でJapan Prizeを受賞します。

受賞業績は、カリコー博士とワイスマン博士が「mRNAワクチン開発への先駆的研究」、フィールド博士が「観測に基づく先進的な定式化によるグローバルな生物圏の生産力推計と気候変動科学への目覚ましい貢献」です。

本年度は、国内外約15,500名の著名な科学者や技術者に依頼し、「物質・材料、生産」分野で208件、「生物生産、生態・環境」分野で138件の推薦を受けました。推薦された計346件の候補の中から、今回の受賞者を決定しました。

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カタリン・カリコー博士(写真左)

1955年1月17日生まれ(67歳 ハンガリーと米国)
ビオンテック 上級副社長
ペンシルべニア大学脳神経外科 特任教授
セゲド大学 教授

ドリュー・ワイスマン博士(写真右)

1959年9月7日生まれ(62歳 米国)
ペンシルベニア大学医学大学院 教授
ペンシルべニア RNAイノベーション研究所 所長

<授賞対象分野>
「物質・材料、生産」

<授賞業績>
mRNAワクチン開発への先駆的研究

<研究概要>
2020年12月、世界に先駆けて英米両国で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、21年2月には日本でも接種が可能になりました。当初、開発には数年を要するとされたワクチンが約1年で量産にこぎ着けたことで、世界中で多くの命が救われ、経済的損失も抑えられました。現在、ワクチンは世界的なパンデミックの終息への大きな力となっています。短期間で開発されたのは、従来のワクチンとは異なる「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」です。
mRNAはDNAと同じ核酸の一種で、生体内でのタンパク質合成の設計図です。1990年代にはDNAとともに医療への応用が研究されましたが、望まない免疫反応を起こすことが障壁となり断念されました。2005年、カタリン・カリコー博士とドリュー・ワイスマン博士は、mRNAを構成するウリジンを修飾核酸のシュードウリジンに置き換えると、望まない免疫反応を抑制できることを発見。2008年には、シュードウリジン化によって目的タンパク質の生産量が上がることも報告しました。この一連の知見は、閉ざされていたmRNAの医療への応用の道を拓き、今回の迅速なワクチン開発につながりました。

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クリストファー・フィールド博士

1953年3月12日生まれ(68歳 米国)
スタンフォード大学ウッズ環境研究所 所長

<授賞対象分野>
「生物生産、生態・環境」

<授賞業績>
観測に基づく先進的な定式化によるグローバルな生物圏の生産力推計と気候変動科学への目覚ましい貢献

<研究概要>
将来の気候変動を高精度に予測するには、地球全体の生物圏の動態を踏まえた推計が不可欠です。特に、二酸化炭素(CO2)の吸収源である植物が気候変動とどう相互作用しているかを明らかにしなければ、人為的なCO2排出量の削減が、地球温暖化の進行をどの程度くい止められるかを知ることはできません。クリストファー・フィールド博士は、野外調査により生きた葉の観測データを積み重ね、それをもとに葉の光合成速度が環境によってどう変化するかを式で表せるようにしました。さらに、植物群落を大きな1枚の仮想的な葉として扱えるように式を発展させ、気候モデルや衛星観測、海洋研究との融合によって、陸海を合わせたグローバルな生物圏のCO2吸収量の分布や、大気中CO2濃度の上昇の原因を明らかにしました。こうしたフィールド博士の研究は、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)など、今日の気候変動対策における科学的基礎となっています。

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