ヘルプメイト・ロボティクス株式会社取締役会長
前東京大学総長
ジョセフ・F・エンゲルバーガー博士は、ロボットという機械が産業界全般に革新的な生産性の向上をもたらすことを早くから予見し、世界に先駆けてその開発と実用化に成功した。その結果、製造業を中心とする第二次産業の画期的な生産性向上を実現させることによって、世界経済の長期にわたる拡大と発展に大きく寄与した。米国ロボット産業協会は同博士を顕彰して、ロボットの科学と応用に顕著な功績のあった人物に対して、毎年国際 産業ロボットシンポジウムの開催の折に、ジョセフ・F・エンゲルバーガー賞を授与している。
設計生産工学は生産活動を通じて人類の豊かさの実現に多大の寄与をしてきた。一方、生産規模の著しい拡大は、地球規模の環境破壊、資源の枯渇、過当競争などの深刻な問題を生みだした。吉川弘之博士は、この地球規模の問題にたいして、地球全体の生産性と人工環境が最適になることを主目的とした設計生産工学の研究を行い、ものづくりに係わる知識体系の著しい専門領域化が、上述の問題解決を困難にしていることを論証し、一般設計学という学問分野を開拓して上述の問題解決のための知識体系化をめざした人工物工学を提唱した。これを実現するために国際的な共同研究であるIMSプログラム(Intelligent Manufacturing Systems Program)を提案して、1994年に日本、米国、欧州諸国、カナダ、豪州が参加する国際プログラムとして結実させた。
以上のように、ジョセフ・F・エンゲルバーガー博士と吉川弘之博士は、人工環境のためのシステム技術にロボット産業の創設と新しい全地球的技術パラダイムの創設という面から多大の貢献をした。
この両博士の業績は1997年の日本国際賞としてふさわしく、ここに推薦する。