Japan Prize Laureates

Laureates of the Japan Prize

2001 Japan Prize受賞者

  • 授賞対象分野
    海洋生物学
  • 授賞業績
    生物海洋学・水産海洋学の発展と水産資源及び海洋環境の保全に対する貢献

【業績解説文】

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ティモシィ・R・パーソンズ博士

ティモシィ・R・パーソンズ博士

ブリティッシュコロンビア大学名誉教授

  • 国籍:カナダ
  • 生年月日:1932年11月1日

授賞理由

 水産資源は乱獲と環境汚染によって減少に向かっている。海洋を世界の人口増加に対処しうる食糧供給源として保全するために、資源と環境を含めた総合的な海洋管理対策が今、真剣に求められている。

 パーソンズ博士は、40有余年にわたり、海洋現場の観測や有名な大型メゾコズムを用いた実験やコンピュータシュミレーションの成果を通して、海洋生物とその環境に関する生態学的研究を発展させ、生物海洋学の位置を確固たるものとした。博士の研究対象は海水、プランクトン、魚類を含み、海洋生態系全体に及んでいる。パーソンズ博士は、これまでの漁業資源の個体群動態に関する研究ではあまり考慮されなかった対象生物と無機環境との関わりや生物間の相互作用に注目し、それらを重視した水産海洋学の発展に先進的な役割を果たした。そして、海洋生態系の構造と機能及び魚類の生産を理解する上で、各栄養段階を構成する生物体の大きさとその量的分布が重要であることに気づき、複雑な食物網の動態を明らかにして、水産資源管理のための新しい戦略を提唱した。資源生物とその理化学的ならびに生物的環境の関係を全体的に捉えることによって、水産資源と海洋環境を保全できるという博士の思考は、従来の漁獲統計に基づく資源管理モデルとは異なるもので、科学者と行政者双方の支持を得ている。

 パーソンズ博士は母国の大学で優秀な研究者を育てると共に、世界各地で訪問教授として教育と研究指導に当ってきた。博士の著書は教科書や海水の化学分析マニュアルとして、多くの国の海洋研究学徒に重要な基礎と指針を与えている。博士はまたユネスコ自然科学局海洋部企画専門官をはじめ、アメリカ陸水海洋学会 や国際生物海洋学協会の会長を務めるなど大きな学術的貢献を行ってきている。

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