歴代受賞者

2019年(第35回)Japan Prize受賞者

「生物生産、生態・環境」分野
食糧安全保障強化と気候変動緩和のための持続的土壌管理手法の確立

オハイオ州立大学 特別栄誉教授
炭素管理・隔離センター センター長
1944年生まれ
授賞理由

 ラタン・ラル博士は、2050 年までに98 億人に達すると予測される地球の人口をいかにして養うか、またその一方で、不適切な生物生産による土壌劣化を防ぐとともに、気候変動を軽減しつつ環境の質を向上させるための土壌管理とは何かという課題を学術的に深化させ、多様な生態系に適合した技術オプションを確立することに成功した。

 博士はまず、サブサハラアフリカ農地生態系において、安定した生物生産を保障し土壌侵食を防止するための不耕起栽培システムを1970年に提案し、この考えを広く世界各国で実践した。また博士は、大気中の二酸化炭素を土壌有機物として隔離し貯留するための、持続的土壌管理手法の確立に向けた原理を解明し、それに基づく現場適用可能な具体的技術の開発において、世界の研究をリードしてきた最も優れた土壌科学研究者である。

 ラル博士の提唱する、作物を用いて大気中の二酸化炭素を土壌へ隔離する技術は、食糧安全保障の強化、水質汚染の軽減、生物多様性の保全など、数多くの副次的効果を安価で提供することができ、実現可能な対策オプションとして大きな優位性をもつと考えられる。その理念は国連の提唱するSDGsのうち、目標1および2「貧困や飢餓の撲滅」、目標13「気候変動抑制」、目標15「陸上生態系の保全」などに密接に関わり、また2015年パリで開催された国連気候変動枠組み条約締結国会議において立ち上げられた4パーミルイニシアティブ(土壌炭素を年間4‰増加させる取り組み)や2016年マラケシュで開催されたCOP22におけるAAAイニシアティブ(アフリカ農業の気候変動への適応の取り組み)にも反映されている。

 このようにラタン・ラル博士は、自然科学的な原理の究明とその応用技術の社会実装にとどまらず、生物生産を支え地球環境に影響を及ぼす土壌の重要性を社会に訴え、一般市民への啓発を推進すると同時に、IPCC、FAOはじめ政策決定者とともに土壌保全を推進するための国際的な取り組みの開始を実現した。その業績は、「生物生産、生態・環境」分野における功績を称える2019年日本国際賞にふさわしいと考える。

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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