歴代受賞者

2020年(第36回)Japan Prize受賞者

「エレクトロニクス、情報、通信」分野
情報理論・符号理論に対する先駆的貢献

マサチューセッツ工科大学名誉教授
1931年生まれ
授賞理由

 ロバート・ギャラガー博士は、ノイズ(雑音)のあるデジタル情報通信路における誤りのない通信の実現において、符号化効率の理論限界値であるシャノン限界に極めて近い効率を達成する低密度パリティ検査(LDPC)符号を提案し、近年の高速大容量通信を高信頼で実現する道を拓いた。

 有線・無線通信におけるデータ伝送について、強い耐ノイズ性を担保することは、高速大容量通信を高信頼かつ高効率で行うためには必要不可欠である。伝送エラーが発生した場合に、受信端でそれを検出し訂正することができる符号を「誤り訂正符号」と呼ぶが、ギャラガー博士は、1960年代にLDPC符号の定義、その高効率な復号法、性能解析に関する斬新なアイディアを提示した。

 その後、約30年間は、実用的な実装法が開発されていなかったこともあり、このアイディアは放置されていた。1990年代に入り、計算機処理能力が飛躍的に向上し、符号長が長い場合でも復号処理に必要な時間が問題とならないほど短くなったことから、LDPC符号のような確率推論に基づく誤り訂正符号が見直され、その実用化に向けた研究開発が活発になった。LDPC符号の復号は計算量が大きいものの、本質的にハードウェアによる並列処理に適しているため、低遅延・高スループットが要求される近年の広帯域大容量情報通信システムへの適用が一気に進んだ。

 2000年代以降、LDPC符号はデジタルテレビ衛星放送(DVB-S2)、10ギガビット有線LAN(IEEE802.3an)、WiMAX高速データ通信(IEEE802.16e)、第5世代(5G)移動通信システムなどのデジタル通信システム、ハードディスクや半導体大容量記憶装置などのデジタル記録システムなどに次々に採用され、現代のデジタル化社会を支える極めて重要な基盤技術となっている。

 LDPC符号は、今後の未来社会の姿とされている超スマート社会(Society 5.0)でも、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させるにあたり、情報通信の高速化、大容量化、高信頼化、低消費電力化等の諸課題の解決に本質的かつ基本的な役割を果たすことが期待される。このように、情報通信技術の進展を長期にわたり牽引してきたロバート・ギャラガー博士の業績は、「エレクトロニクス、情報、通信」分野における貢献を称える2020年日本国際賞にふさわしいと考える。

受賞者

受賞者発表記者会見

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