歴代受賞者

2020年(第36回)Japan Prize受賞者

「生命科学」分野
古代人ゲノム解読による古人類学への先駆的貢献

マックス・プランク進化人類学研究所 教授
1955年生まれ
授賞理由

 生物学の一つの大きな課題は、ヒトの起源、すなわち進化の過程でヒトはどのように生まれたのか、という課題である。スバンテ・ペーボ博士は、1980代中頃から現在に至るまで、古代骨を用いたDNAの解析手法の研究を継続的に行い、分解の激しいDNA配列の決定技術を開発してきた。そして、1997年にはネアンデルタール人のミトコンドリアDNA配列決定に成功し、その配列からネアンデルタール人はヒトの直系の祖先ではなく系統的には分岐した人類であることを推定した。さらに核ゲノムの解読に挑戦し、次世代シークエンサーをいち早く活用して、2010年に世界で初めて古代核ゲノムで「全ゲノム」水準のものを、ネアンデルタール人を対象に達成した。ペーボ博士の開発したこの手法により解析の精度が格段に上がり、ミトコンドリアDNA解析では解析不能であった、ヒトの祖先とネアンデルタール人の間での交雑の存在が明らかとなった。また、この手法をロシアアルタイ地方のデニソワ洞窟より出土した骨片や歯に応用し、そのDNA配列からネアンデルタール人に近いグループのものであることを見いだし、このグループをデニソワ人と命名した。更なる解析により、ネアンデルタール人とデニソワ人との間で、交雑があったことも明らかにした。ヒトは他の古人類とは完全に系統が違うかどうかについて長年に渡り議論されてきたが、ペーボ博士の解析により、ヒトは絶滅した古人類のゲノムを受け継いでいたことが明らかにされたのである。

 このように、ペーボ博士は古人類学に古代骨を用いたゲノム解析をもちこむことで、古人類学の研究を一変させた。また、彼の手法や成果は古人類学だけでなく、人類学、考古学、歴史学などヒトに関わるすべての分野に大きなインパクトを与え、それぞれの発展に寄与した。また、マックス・プランク進化人類学研究所の教授として、多くの古人類のゲノムプロジェクトを牽引し、古人類学のゲノム研究を広げるとともに、多くの研究者を育成したことも特筆される。

 以上のように、スバンテ・ペーボ博士は、先駆的な古代人ゲノムの解析を通して、ヒトとはなにものかという根源的な問題に新たな光をあてたことから、「生命科学」分野における貢献を称える2020年日本国際賞にふさわしいと考える。

受賞者

受賞者発表記者会見

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