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大河内直彦

独立行政法人 海洋研究開発機構
海洋環境・生物圏変遷過程研究プログラム
プログラムディレクター

気候はどのようにして変わるのだろうか?

骨子

海底堆積物や氷床コアなどを分析して過去の気候を復元することを通してわかる、気候の成り立ちや変動についてわかりやすく解説します。

要旨

 現在、大気中に含まれる二酸化炭素などの温室効果ガス濃度は年々増加しており、私たち人類は深刻な地球温暖化問題に直面しています。

 しかし、そもそも地球の気候とはいったいどのようにして成り立っているのでしょう? 気候が温暖化するとはどのようなプロセスで起きるのでしょう? 「気候が変わる」ということを理解するためには、気候がどのようにして安定しているかについても知らなければなりません。過去何千年にもわたって、なぜ地球の平均気温は15度で保たれてきたのか? なぜ海面は上がったり下がったりしてこなかったのか? といったことを知らねばならないのです。

 こういった問いに答えるために、過去に地球が経験した気候変動を読み解くことは、これまで非常に役に立ってきました。地質学者たちは過去半世紀以上にわたって、世界各地の海底・湖底にたまっている堆積物や、南極やグリーンランドの氷を掘り起こして、そこに刻まれた過去の気候記録をひとつずつ丹念に読み解いてきました。海底堆積物やアイスコアといった媒体中に化学的、物理的、生物学的なシグナルとして記録される過去の気候が、基礎科学の力を借りて解読されてきたのです。その読み解いた記録をひとつずつ重ね合わせていくことにより、過去の地球に起きた気候変動の全貌と、それから推定される気候の成り立ちが徐々に明らかにされてきました。

 たとえば今から2万年前の地球には、北米大陸北部とヨーロッパ大陸北部には厚さ3キロメートル以上におよぶ巨大な氷床が分布しており、地球の平均気温は現在よりも8度ほど低下していました。いわゆる「氷期」と言われる時代です。当時も今も太陽から地球に与えられる熱エネルギーはほとんど同じだったのですが、太陽から与えられるエネルギーを地球上の各地に再分配する大気や海洋の動きは現在とはまったく異なっていたのです。過去の地球の気候を紐解いていくと、地球の気候には、どうやら複数の「安定解」が存在することがわかります。

 今回の私の講演では、特に氷期や間氷期といった過去数万年間に実際に起きた気候変動に焦点を当てて、その原因や実際に気候が変わってきたプロセスについて解説します。こういった知見は、気候の骨組みについて理解するうえで欠かせないもので、現在起きつつある地球温暖化の理解にも重要な意味をもっています。講演の中では、堆積物の中から気候変動を読み解く具体的な研究ツール(古水温や古気温を推定するために使われる酸素同位体比、有機分子の化石バイオマーカーなど)についても紹介します。また最後には、バイオマーカーを使って知る石油の起源についても簡単に解説する予定です。

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